米兵の事件・事故が多発している。法律を無視し、犯罪を繰り返す「隣人」は沖縄から出て行ってほしいというのが県民の本音である。日米両政府は県民の不安と憤りを直視し、事件・事故防止の抜本策を示すべきだ。
県の試算によると10月25日から11月8日に米兵が逮捕された事件13件のうち、8件が深夜の外出や飲酒を規制するために米軍が定めた「リバティー制度」に違反しているか、違反した疑いがあることが分かっている。
事態を重視した県の謝花喜一郎副知事は先月10日、橋本尚文外務省沖縄担当大使と田中利則沖縄防衛局長を呼び出し、「異常事態だ」と抗議した。米軍は県の呼び出しを拒否している。事件・事故を起こした米軍の当事者意識の欠如にあぜんとする。
さらに沖縄市で18日、酒気帯び運転の米兵が逮捕された。
沖縄市は「飲酒運転への意識の低さ、飲酒プログラムの機能不全を示すもの」として、米軍、沖縄防衛局、外務省沖縄事務所などに抗議している。市の指摘を待つまでもなく、「リバティー制度」は有名無実化していよう。
これらの抗議に米軍、日米両政府はきちんと向き合っているのか疑念を抱かざるを得ない。本来、「異常事態」を宣告し、対応を急ぐべきは事件・事故の当事者である米軍と米政府、基地の提供義務を負う日本政府の方ではないか。
10月末から約1カ月の間に発生した米兵の事件・事故は17件。2日に1件というペースである。在沖米軍が自らを律することができなければ、日本政府が対処しなければならないはずだ。
県はこれまでも「米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキングチーム」の早期開催を求めてきたが、17年4月を最後に開かれていない。
先月10日の県抗議の席で橋本大使は「次回の開催に向けて調整を続けている」と述べた。沖縄側と日米が危機感を共有し、協議する場を早急に設けなければならない。
協議のレベルは県内にとどめるのでなく、日米合同委員会でも議論する必要がある。さらにはバイデン次期米政権にも米兵絡みの事件・事故の問題への対処を求めるべきだ。沖縄が米兵の横暴が許される無法地帯ではないことを明確に伝えてほしい。米兵犯罪の温床となっている不平等な日米地位協定の改定も交渉のテーブルに載せるべきだ。これは菅政権の責務である。
相次ぐ米軍犯罪と人権軽視を背景とした「コザ騒動」から今月で50年になる。県民を傷つける事件・事故を引き起こす米軍の当事者意識の欠落と責任放棄、それを半ば放置する日米両政府の不作為は半世紀を経ても本質的には変わっていない。
このままで良いのか。両政府は県民に対し、明確に答えるべきである。
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