米パリ協定へ 再エネ時代が加速する
米国が温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に復帰する。再生可能エネルギーの推進や電気自動車(EV)の普及に力を注ぎ、世界の「脱炭素化」をリードする−。次期大統領の“野心”である。
大統領選翌日の十一月四日、米国は「パリ協定」から離脱した。
温暖化懐疑論者で「パリ協定はわれわれのビジネスを破壊する」と主張するトランプ大統領の強い意向があってのことだった。
一方、「環境派」として知られるバイデン次期大統領は、オバマ前政権の副大統領としてパリ協定を成立に導いた当事者だ。
「二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとし、クリーンエネルギー100%社会の実現」を公約、就任初日に協定復帰を宣言すると明言している。
大統領権限で国連に再加入を通告すれば、その日から三十日後に復帰がかなう。
ただ戻るだけではない。バイデン氏は就任後百日以内に「世界気候サミット」を開催し、主要排出国の首脳に温室効果ガスの削減目標を引き上げるよう、直接働き掛けるという。
今後締結する通商協定では、相手国にパリ協定の目標を順守するよう義務付け、守れない国の製品には、炭素税を課す方針だ。
国内的には、再エネを中心とする環境インフラに四年間で二兆ドル(約二百十兆円)を投資して、発電による温室効果ガスの排出を、三五年までにゼロにする。蓄電池の活用、EVの普及、建物や家庭の省エネや水素エネルギーの開発などにも力を注ぐ。
欧州連合(EU)では既に、再エネへの投資によってコロナ禍で停滞した経済の回復を図る「グリーンリカバリー(緑の復興)」が進行中だ。
例えば洋上風力発電の能力を、五〇年までに三百ギガワットに引き上げる。原発三百基分である。
菅義偉首相は先の二十カ国・地域首脳会議で「脱炭素社会の実現のため、国際社会を主導する」と宣言した。だが石炭火力や原発へのこだわりを捨てきれず、再エネ推進の具体的方策や道筋は示せていない。
日本の発電量に占める再エネの割合は二割弱、うち半分は水力だ。既に三割近い中国に比べても出遅れ感は否めない。
再エネはもはや、世界経済の新たな推進力である。米国の政策転換で、流れはさらに加速する。
エネルギー転換の新たな波に乗れるよう、巻き返しを図りたい。
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