Unable To Break with Trumpism: Too Few Republicans Join Impeachment Revolt

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米国の民主主義に暗黒の歴史を刻んだ1月6日の連邦議会占拠事件。暴徒を扇動した罪を問うトランプ前大統領の弾劾裁判は早々と無罪評決を下した。野党・共和党には迷いもあるが、頑健な「トランプ主義」との決別はできない。米社会の深刻な分断の解消はなお遠い。

1カ月前に凄惨な事件の現場となった米議会上院での実質審理は、新型コロナウイルス対策など緊急課題への配慮から、わずか5日間で終わった。弾劾は上院で3分の2を超す賛成を要する。50対50で与野党の議席が拮抗するなか、ハードルは高かった。2020年のウクライナ疑惑に続くトランプ氏の2度目の無罪に驚きはない。

重要なのは、この裁判が米国の民主主義の将来にもたらす余波だ。

まず、トランプ氏は無罪を弾みに、24年の大統領選挙もにらんで政治の表舞台に戻る可能性が高い。トランプ支持を名乗る極右勢力の蛮行があっても、前大統領が共和党内で揺るぎない影響力を握ることが再確認された。共和党議員で有罪を支持した「造反」は7人にとどまり、弾劾の成立には10人不足した。

「これから皆さんにたくさんお伝えすることがある。全ての人に米国の偉大さを達成するための素晴らしい旅をご一緒するのが楽しみだ」。ツイッターというメガホンを奪われ、発信機会が激減していたトランプ氏は13日の声明でこう語った。

民主党のバイデン大統領に敗れたとはいえ、7400万を超す票を大統領選で獲得したトランプ氏。共和党支持者の8割以上はトランプ氏の無罪を支持する。敵と味方を区別し、分断をあおることで支持者の心をつかんだトランプ流への共感は衰えない。「米史上最大の魔女狩りの新たな段階」と民主党を非難する手法は不変だ。

選挙結果を認めず、バイデン氏への円滑な政権移行もぎりぎりまで拒否したトランプ氏が再び勢いづけば、米民主主義の傷口は一段と広がりかねない。

一方で無視できない動きもあった。民主主義のルールを受け入れず暴徒を止めようとしなかったトランプ氏に対する、共和党主流派からの拒否反応だ。

ペンス副大統領は議会占拠事件当日の午後2時12分、家族や側近と避難を開始。「ペンスを処刑しろ」と連呼する暴徒の攻撃を辛うじて免れた。トランプ氏はその後も2時24分に「ペンス氏は勇気がない」と非難するツイートをした。

共和党上院トップのマコネル院内総務は無罪確定の直後、トランプ氏を強烈に非難した。「彼(前大統領)はテレビで混乱を楽しそうに見ていた。ペンス氏が深刻な危機に直面しても、トランプの横断幕を持つ暴徒が警官を殴打していても、自分の副大統領をツイートで攻撃していた」。トランプ氏に「無法と暴力をあおった責任がある」という言葉は、民主党の訴追文を読むかのようだ。

マコネル氏が無罪を支持したのは、すでに退任した大統領は弾劾できないという憲法判断による。民主主義の理念を揺るがす行動に出たトランプ氏と一線を画す機運は共和党内にも芽生える。だが、現時点では「遠ぼえ」の域を出ない。

トランプ主義と決別できなかった共和党は大きな不安要素を抱えた。今後もトランプ支持者に目配りし続ける必要が生じたからだ。4年後の次期大統領選でそのツケが回ってきかねない。

バイデン大統領は米国の分断の修復を掲げる。だが実際には矢継ぎ早にトランプ政権の政策の転換を打ち出し、共和党の反発を強めている。

米国の民主主義をいかに立て直すか。与野党ともその意識はあるが、党派間の隔たりは激しい。トランプ氏が深めた「分断の政治」の出口はみえない。

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