社説[低空飛行訓練容認]対米従属が浮き彫りに
政府は一体、どうするつもりなのか。これだけ県や県議会、地元自治体が足並みをそろえて抗議しても、何もできないのであれば、政府の役割放棄に等しい。
菅義偉首相は17日、衆院予算委員会で、米軍機の低空飛行訓練に関し「米軍の飛行訓練は日米安保条約の目的達成のため重要だ」との認識を示した。
菅首相の国会答弁によって米軍は、日本政府から訓練のお墨付きを得た、と思ったかもしれない。県や国頭村などが抗議したその翌日の18日、慶良間諸島や国頭村の辺戸岬周辺で訓練を強行した。
そして19日。玉城デニー知事はこの日、岸信夫防衛相に対し、提供区域外での低空飛行訓練を実施しないよう強く働きかけてほしい、と電話で申し入れた。
謝花喜一郎副知事も同じ日、政府の追認姿勢を疑問視し、防衛省の事務次官、外務省の北米局長に電話で強い対応を要請した。
県議会米軍基地関係特別委員会の照屋守之委員長、照屋大河副委員長は、全会一致で可決した低空飛行訓練の即時中止を、田中利則沖縄防衛局長に申し入れた。
国頭村議会も同日、臨時議会を開き、抗議決議を行っている。
だが、米軍はこの日も、抗議などなかったかのように、辺戸岬周辺で訓練日程を消化したのである。
菅首相はほんとうに、この訓練は何も問題ない、と考えているのだろうか。問われるべきは、政府の対米従属の姿勢である。
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日米両政府は、1999年の日米合同委員会で、国際民間航空機関(ICAO)や航空法に規定された最低高度基準を米軍の訓練にも適用する、ことに合意した。
その高度規制を守って訓練している、というのが米軍側の見解だ。だが、過去には三沢飛行場所属のF16戦闘機が最低高度を下回る超低空飛行訓練を実施していたことが明らかになっている。
現状は何の検証も行われておらず、米軍の言い分だけをうのみにすることはできない。
合意に基づく高度規制に従っていれば問題はないのか。
多数の死者を出した米軍機によるイタリアでのロープウエー切断事故にみられるように、低空飛行訓練には、常に危険がつきまとう。「訓練は重要だ」という菅首相が発信したメッセージは、沖縄の現実を無視した「上から目線」というしかない。
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地位協定は、米軍の活動について「公共の安全に妥当な考慮を払う」ことを義務付けている。目撃者が感じた「驚いた」という実感を軽視すべきではない。
政府を動かすための最低限の条件は、県内が、与野党の別なく、党派を超えて、まとまることである。沖縄県と県議会、市町村と市町村議会が一体となって政府要請を行うことが重要だ。
年内に解散・総選挙が実施される。来年は復帰50年の節目の年でもある。過重負担への逆行を許さない県民意思を政府に示すときだ。
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