<社説>バイデン外交 懐の深い指導力発揮を
「米国は戻ってきた」(バイデン大統領)−。米外交がトランプ流の自国第一主義から国際協調路線に回帰した。この政策転換を歓迎する。米国は地球規模の課題克服に指導力を見せてほしい。
オンライン方式による先進七カ国首脳会議(G7サミット)が、バイデン氏が就任後初めて臨んだ多国間協議だった。
バイデン氏はトランプ前政権が参加を拒否したワクチン供給の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」に、最大で四十億ドルを拠出すると表明した。G7全体では総額七十五億ドルの拠出となる。
G7は首脳声明で「二〇二一年を多国間主義のための転換点とする」と宣言した。トランプ氏によって機能不全に陥ったG7が、たがを締め直して再出発することになった。G7がコロナ対策で世界をリードしていけるのか、真価が問われる時だ。
国際問題に関与する米国が戻ってきたとはいっても、もはや「世界の警察官」を引き受ける意思も余力もない。
自由や民主主義といった理念を共有する同盟国に、己の足らざるところを補ってもらう−。バイデン政権が進めようとしているのは、バードン・シェアリング(責任分担)だ。同盟国は相応の負担を覚悟しなければならないだろう。
米国が自由主義陣営を引っ張っていくのは歓迎だ。ただし、先走っては困る。同盟国との意見調整を重ねてほしい。当然のことだが、各国にはそれぞれの国益、立場がある。
例えば、バイデン氏が「最も重大な競争相手」と見なす中国との関係だ。中国と覇権を争う米国と、中国との経済関係を損ねたくない欧州との間には温度差がある。米中の狭間(はざま)にある日本も、この両国関係の悪化に巻き込まれるのは避けたい。
「われわれが直面する第四次産業革命や感染症のパンデミック(世界的大流行)といった課題を前進させるには、独裁が最善の方法か、それとも民主主義が不可欠なのか−。われわれはこの議論のまっただ中にある」
G7サミットの後に開かれたミュンヘン安全保障会議の特別会合で、バイデン氏はこんな認識を示したうえで「民主主義は勝たなくてはならない」と述べ、同盟国に結束を呼び掛けた。
指導力を発揮するにあたっては、リーダーとして懐の深さを見せてほしい。
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