台頭する中国をにらんだ結束であることは明らかだ。ただ、地域の緊張を高め、分断をもたらすことになっては元も子もない。国際秩序の安定に資する枠組みとせねばならない。
日米豪印4カ国による初の首脳協議がオンラインで開かれ、「自由で開かれたインド太平洋」に向けた関係強化をうたう共同声明を発表した。新型コロナのワクチン供給や気候変動対策、海洋安全保障での協力のほか、年内に対面による首脳会談を行う方針も確認した。
「4」を意味する英語にちなみ、Quad(クアッド)と呼ばれるこの枠組みは、安倍前首相が第1次政権の時に提唱した。各国の対中姿勢の違いなどから曲折もあったが、近年、局長級、外相級と会談のレベルをあげてきた。
今回の首脳級協議は、中国を「最も重大な競争相手」と位置づけるバイデン米大統領の呼びかけで開かれた。この後、日本との外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)、中国との外交トップ会談、そして菅首相の訪米へと続く、バイデン政権の対中外交の第一歩といえる。
米国がトランプ前大統領時代の一国主義を改め、アジアへの関与や同盟関係を重視する外交に転じたことは歓迎できる。とはいえ、対中包囲網の強化とみられ、対抗措置がとられれば、対立はエスカレートする。
中国側にはQuadを「インド太平洋版のNATO(北大西洋条約機構)」につながる動きと警戒する見方もある。軍事とは一線を画した協力関係であることを明確にすべきだ。
そもそも4カ国の中国への向き合い方は一様ではない。特にインドは「非同盟」の伝統を持ち、中国とのバランスに腐心している。今回の首脳協議で、コロナ対策など地球規模の課題への対応を前面に出したのも、インドへの配慮からだ。中国への対決姿勢を強め、足並みが乱れては本末転倒である。
南・東シナ海での強引な海洋進出など、既存の秩序に挑む中国の行動を抑えつつ、対話を重ね、協調による共存をめざす。共同声明がうたう「国際法に根差した、自由で開かれ、ルールに基づく秩序」にどう中国を巻き込んでいくか、粘り強い外交努力が求められる。
人権や法の支配など、価値観の共有を協力の基礎に置く4カ国側の姿勢も問われる。例えば、インドは核不拡散条約に加盟しないまま、核兵器を開発・保有し、その人権状況にも国際社会の厳しい目が注がれる。自らの課題に目をつぶることなく、普遍的価値の拡大に貢献できれば、この枠組みは対中という思惑を超えて、国際秩序を支える意味をもつに違いない。
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