Time for Japan To Reboot Its Semiconductor Industry Too

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世界各国が半導体産業の強化に一斉に動いている。官民一体となって半導体振興をめざす中国に対抗し、バイデン米政権は巨額の公的助成を通じた自国内の生産基盤の強化に乗り出した。欧州連合(EU)も脱・海外依存を掲げ、先端半導体の一定の割合を域内でつくる目標を打ち出した。

半導体は人工知能(AI)やビッグデータを駆使したデジタル社会を実現するために欠かせない戦略部品で、経済安全保障上の重要性も大きい。日本も官民挙げた取り組みを始めるときだ。

米欧の動きの背景には、半導体の微細加工技術で台湾積体電路製造(TSMC)が競合に大きな差をつけ、先端的な半導体をつくるには新竹など台湾西部に立地する同社の工場に多くを頼るしかない現実がある。

台湾と中国の政治的な緊張が高まるなかで、サプライチェーンの脆弱性について意識せざるを得ないゆえんだ。加えて足元の供給不足も、半導体調達の途絶リスクを関係者に再認識させた。

取り組みが先行するのは米国で、昨年アリゾナ州へのTSMCの工場誘致に成功した。今年2月にはバイデン大統領自ら半導体チップを手に持ち、自国に半導体の開発・生産能力を確保することの重要性を訴えた。3月には米インテルがやはり同州に200億ドルを投じて新鋭工場をつくると発表し、官民がタッグを組んでの巻き返しが本格化している。

EUも新型コロナ対応でつくった復興基金の一部をデジタル分野に投じて、先端半導体の域内生産をめざす目標を掲げた。

日本でも3月に経済産業省で検討会議が発足し、強化策のメニューの検討を始めた。官民一体で展開される世界的な競争の現実を直視し、スピード感をもって作業を進める必要がある。同時に日の丸半導体にこだわった過去の政策の反省にたって、独自の技術やノウハウを持つ海外企業の拠点誘致などに力を入れたい。

日本の半導体は往年の力を失ったが、素材や製造装置はまだ強い。自動運転などで先端半導体の有力ユーザーになる自動車産業の集積もある。こうした特徴を生かしつつ、既存の半導体企業のてこ入れもしながら、国内に確固たる半導体の事業基盤を残したい。

サプライチェーンの安定性を増すために、米国などとの協力や役割分担を進めるのも一案だ。

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