Afghan Withdrawal: Peace Efforts Are America’s Responsibility

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米国は確かに「米史上最長の戦争」で疲弊した。だとしても、そこで暮らす人びとを、さらに長い戦乱に置き去りにすることがあってはなるまい。

 アフガニスタンに駐留する米軍について、バイデン大統領が9月11日までに、すべて撤退させると表明した。北大西洋条約機構(NATO)も、同時期に撤収する。合わせて約1万人の兵士がこの国を去る。

 トランプ前政権がこの5月としていた撤退期限を、4カ月ほど先送りした。それでも、2001年の米同時多発テロの後に米国が主導して始めたアフガン紛争から、手を引くことに変わりはない。

 演説でバイデン氏は、米軍駐留は、アフガニスタンを再び米本土へのテロ攻撃に使わせないためだったとし、その目的は達成したと強調した。

 ただ、その見方には米国内からも異論が出ている。アフガニスタンではいまも、反政府武装勢力のタリバーンが強い力を保っているからだ。

 米情報機関は今月、「アフガン政府は劣勢で、タリバーンは軍事的勝利を信じている」との報告書を出した。外国軍が去れば、また激しい内乱に戻るだろう、と地元は心配している。

 力の真空が生まれれば、再び国際テロの温床となりはしないか。バイデン政権は、その懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、和平を築く重責を負っている。

 必要なのは、停戦を実現し、アフガン政府とタリバーンの和解を進めることだ。その汗をかかずに撤退するなら、トランプ政権と変わらぬ自国第一主義とのそしりを免れまい。

 バイデン政権は、和平を模索する手は打っている。さきに、アフガン政府とタリバーンが権力を分け合う形で暫定政権をつくることを提案した。今月24日からは、トルコで国際会合が開かれる。

 ただ、道のりは険しい。タリバーンは、外国軍が残る限りは交渉に応じないとして、ボイコットも示唆している。米国は、影響力を持つパキスタンなど周辺国とも連携して、粘り強く説得しなくてはならない。

 国際テロ組織の脅威は米国だけに向けられたものではない。アフガニスタンと国境を接する中国や、旧ソ連時代に軍事侵攻したロシアにとっても、重い課題である。この問題では、バイデン政権も中ロとの協力を探るべきだ。

 米軍の新たな撤退期限は、米同時多発テロから20年の節目の日である。厭戦(えんせん)意識が広がる米国民向けの演出が優先されることがあってはならない。国際協調主義を掲げるバイデン政権の真価が試される。

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