〈社説〉ガザの武力衝突 停戦へ米国は結束乱すな
2021/05/18 09:16 長野県 論説 社説
イスラエルとパレスチナの武力衝突がやまない。イスラエルはガザ地区を大規模に空爆し、市民の犠牲者が増え続けている。一刻も早い停戦に国際社会は全力を挙げなくてはならない。
国連の安全保障理事会は緊急会合を重ねているが、戦闘停止を求める声明さえ出せていない。拒否権を持つ常任理事国の米国がイスラエルを擁護する立場を取り、一致した対応を阻んでいる。
バイデン米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相との電話協議で自衛権を強く支持すると伝えたという。軍事行動にお墨付きを与えたとしか受け取れない。空爆の継続を宣言したネタニヤフ氏は、演説で謝意を表した。
米国がイスラエルを支持し、軍事攻撃が歯止めなく拡大した2014年のガザの再来にならないか心配だ。戦闘が2カ月近くに及んだこのときは、爆撃と地上軍の侵攻で街が破壊し尽くされ、2200人を超す住民が死亡した。
イスラエルは今回も地上軍の侵攻を視野に入れている。パレスチナ側の死者は既に200人に達する。事態の悪化を避けるには、米国がイスラエルへの関与の仕方を改めることが欠かせない。
イスラエルが占領する東エルサレムでパレスチナ住民に立ち退きを命じたことを発端に、衝突が拡大した。ガザからのロケット弾による攻撃への自衛だとして、ネタニヤフ政権は空爆を始めた。
イスラエル側でも死傷者が出ているが、軍事力の差は圧倒的だ。ガザは長野市の半分ほどの区域におよそ200万人が暮らす。境界は封鎖され、空爆や砲撃にさらされた住民に逃げ場はない。米国は国際社会と結束してイスラエルに軍事攻撃の中止を迫るべきだ。
イスラエルの建国によってパレスチナの人々が故郷を追われてから70年余。ガザとヨルダン川西岸地区が占領されてからも半世紀以上が過ぎる。西岸では国際法に反する入植地の建設が進み、パレスチナ人の土地が奪われている。
バイデン米政権は、極端にイスラエル寄りだったトランプ前政権の政策を改め、パレスチナへの支援も復活させた。けれども、中東和平に積極的に関与する姿勢は見えてこない。占領地での入植政策にも懸念を示しただけだ。
難民の帰還と占領の終結という根幹の問題を解決しなければ、パレスチナの人々の尊厳と生きる権利は損なわれ続ける。頓挫して久しい和平交渉を前進させるためにこそ、米国はイスラエルへの影響力を行使しなければならない。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.