米国で銃犯罪が急増している。
先月にはフロリダ州で若者の集団に男3人が銃を乱射し、多くの死傷者が出た。サウスカロライナ州でも乱射事件があり、14歳の少女が死亡し、十数人が負傷した。
今年に入って銃による殺人や事故での死者は8300人を超える。日々50人以上が犠牲になっている計算で、近年で最多だった昨年のペースを上回る。極めて深刻な状況だ。
驚くのは、11歳以下の死者がすでに120人を超えていることだ。銃で遊んでいたり、銃撃に巻き込まれたりしたという。いたいけな子供の命が日常的に奪われる現実に胸が痛む。
急増の背景には、新型コロナウイルスの流行があるとされる。感染が拡大した昨年は、銃による犠牲者が前年より3割近く増えた。鬱屈した心情から暴力に駆り立てられたおそれは否定できない。
治安の悪化から護身用に銃を買う人が増え、昨年の販売数は過去最高を記録したという。所有者を特定できない「ゴーストガン」と呼ばれる組み立て式の銃が大量に流通し、犯罪に拍車をかけた。
雪だるま式に銃が増え、米国社会に氾濫する悪循環の構図だ。今や人口を超える4億丁に達するという。負の連鎖を断ち切り、犯罪を抑え込んでいくことが急務だ。
米国民の多くは銃犯罪を深刻な問題と受け止めている。だが、対応をめぐっては意見が分かれる。
与党の民主党は規制の強化で犯罪を減らそうと考える。野党の共和党は規制を強めれば命を守る手段を失いかねないと主張する。
米国の憲法は市民に銃の所持を認めている。ただし目的はあくまで自衛だ。高速連射式の攻撃的な銃が市中にあふれる現状は、自衛の域をはるかに超えている。
力には力で」の対応では、銃社会は膨張するばかりだ。殺傷力の高い銃が容易に手に入らないように規制を強める。購入者の身元確認をより厳しくし、違法な売買を防ぐ。こうした方策が必要ではないか。
これほど銃犯罪が多い民主主義国は米国を除いて他にない。バイデン大統領が「国際的な恥」と認めるのは当然だろう。人命と人権の大切さを世界に説くなら、まず足元の課題を解決すべきだ。
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