US Monetary Policy: Care Is Needed with the Pandemic Exit Strategy

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米国の金融政策 「出口」へ細心の注意を

米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、2024年以降としていた事実上のゼロ金利政策を解除する時期の見通しを23年に前倒しした。国債などを買い入れる量的緩和の縮小も本格検討に入る。

 新型コロナの感染拡大を受けた大規模な金融緩和の出口に向け、一歩踏み出したと言える。

 米経済は巨額の財政出動とワクチン普及で急回復し、物価上昇も加速している。国内総生産(GDP)は危機前の水準にほぼ戻り、緩和マネーの流入で株式や不動産など資産価格も上昇している。

 利上げ時期を前倒しすることで景気過熱や資産バブルを回避するというFRBの狙いは分かる。

 ただ発表後、日米などで株価が急落した。基軸通貨ドルを管理するFRBの動きは各国の金融政策と経済に多大な影響を及ぼす。13年には量的緩和縮小を示唆して新興国の通貨安を招いた例もある。

 世界経済を不安定化させぬよう、市場と丁寧に対話するなど細心の注意を払ってもらいたい。

 FRBはコロナ禍を受けてゼロ金利を復活させ、量的緩和の再開も決めるなど、主要な中央銀行と連携して経済安定を図ってきた。

 リーマン・ショック時のような金融危機と違って金融政策が効きにくいものの、資金が瞬時に国境を超えるグローバル経済下で結束した対応は一定の効果を上げた。

 気がかりなのは、ワクチン接種の進み具合などで各国の景気回復ペースに差が生じ、金融政策の方向性に違いが出つつあることだ。

 カナダが量的緩和縮小を決め、ニュージーランドなども米国に先行して利上げする公算が大きい。

 一方、ワクチン確保が遅れている新興国や途上国の景気は停滞している。マイナス金利政策を導入する欧州中央銀行(ECB)も緩和維持の姿勢を崩していない。

 こうした状況が続けば、為替相場をはじめ資金の流れを不安定にする恐れがある。新興国から資金が大量流出すると、コロナ禍に苦しむ経済をさらに傷めかねない。

 各国の金融当局は緊密に情報共有し、目配りする必要がある。

 とりわけ出口が遠いのは、現行緩和策の維持を先週決めた日銀である。大規模緩和が8年に及び、銀行収益悪化や市場機能低下といった副作用に弥縫(びほう)策で対応しているが、行き詰まりは明らかだ。

 政府のコロナ対応が後手に回り続けて景気回復が遅れ、直ちに金融政策を見直せないのだろう。それでもコロナ収束後を見据えて出口戦略の検討は始めるべきだ。

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