Will the Federal Reserve Board Really Move Up Rate Hikes to 2022?

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FRBは2022年に利上げを本当に前倒しするのか

結局利上げ開始は2023年後半以降になる?

6月16日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、注目されていた18人のメンバーの利上げ開始時期の見通しが3カ月前から大きく変わり、金融市場にサプライズをもたらした。

3月のドットプロットでは、多数のメンバーが2024年まで利上げしない見通しを示していた。だが今回のFOMCではもともと2023年に前倒しされるとの見方が事前に広がってはいたものの、「2023年中に2回利上げ」がメンバーの平均的な見通しに変わったのである。

3カ月前のFOMCでも、利上げ開始予想が2023年に前倒しされるとの事前予想が多かったが、利上げ開始の想定はほぼ据え置かれた(前回FOMCの筆者の直前予想は当たった)。ただ、その後に判明したインフレ率上昇を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)はゼロ金利政策をいつまで続けるだろうか。

今回のFOMC直前に、「2023年に利上げ想定が前倒しされる可能性はほぼ五分五分で、どちらかといえば2024年に据え置かれる」と筆者は考えていた。ただ先述したように、筆者を含めた市場参加者の想定を超えて、利上げ時期の想定が前倒しされたのである。

見方がバラつくFOMCメンバーの実態

最新では「2023年中に2回利上げ」がメンバーの平均的な見通しだが、その利上げ開始想定はかなりバラついている。つまり、2022年内の早期利上げを想定するメンバーが7人に増えた。

一方で、従来どおり2023年までゼロ金利継続を想定するメンバーは5人と少数派に転じた。平均的な2023年内の利上げ開始は6人で、メンバーの利上げ開始時期の想定は大きく広がった。

ハト派寄りに位置するとされるジェローム・パウエル議長が今回、2023年の利上げ想定に転じたかは微妙だが、副議長を含めた執行部メンバーの数人が2023年に利上げ開始に想定を前倒ししたとみられる。

今回筆者は「利上げ時期前倒し」を予想できなかったので、FRBウォッチャーとして不甲斐ない結果となった。以下では後講釈を含めて、FRBの判断変更について筆者なりに考えたい。

まず足元のインフレ上振れについて、FRBメンバーの多くは一時的であるとの見解を示しており、この点を筆者は重視していた。足元のインフレ率が上振れても、「平均インフレ目標」の枠組みではインフレ上振れを積極的に許容する余地がある。このため、インフレ率の上振れは、主流派の利上げ時期の判断にはあまり影響しないだろうと考えた。

ただ実際には、大幅なインフレ率上昇が起きたことで「将来のインフレ予想」の不確実性が高まった。金融市場においても、インフレがどの程度「持続的な現象」であるかについて議論はさまざまだが、同様にFOMCメンバーの中でも議論が活発に行われていたのだろう。

その結果、投票権を常時持つ複数の執行部メンバーが、利上げ開始想定を2023年に前倒ししたとみられる。なお、メンバーによる、2022~2023年のインフレ率や失業率の見通しは大きく変わっていないので、今後の利上げ開始方針、あるいはリスクマネジメントが主に変わったということになる。

足元のインフレを「一時的」と解釈しながら、これまでのインフレ率の上昇がFOMCメンバーの利上げ判断の時期に影響した。これはどのような意味を持つか。

まず、FRBが掲げている「平均インフレ目標」の枠組みだが、この解釈や適用方法にメンバーに差があるということだ。そして、一部メンバーが抱いている「インフレ上振れの許容度」が大きくない、と推察される。

例えば、2019年初を起点にしてコアPCE(個人消費支出)価格指数の2%上昇経路ラインを引くと、2020年に下振れた物価水準は、2021年4月までの大幅上昇を受けて2%上昇の経路にすでに戻っている。

「物価下振れの穴埋め」戦略の設定期間を2~3年程度とすれば、「新型コロナ禍で下振れた物価水準の穴埋め」は終わっている。であれば、金融緩和強化を徹底するよりも、インフレ上振れを積極的には許容しないとの考えに至る。

なぜ、タカ派のインフレ上振れ許容度が弱まったのか

一方、短期的な2%超へのインフレ上昇を積極的に許容することで、長年低下してきたインフレ期待を2%まで恒常的に押し上げるために、FRBは「平均インフレ目標」を採用した。そして、平均インフレ目標の枠組みを導入すると同時に、雇用最大化を改めて優先すべき目標として掲げた。

ただ、タカ派を中心に多くのメンバーが最近の価格上昇を受けて、「インフレ上振れ」を容認する姿勢が弱まったと解釈できる。

FOMCの翌々日18日(金)に、現在はかなりタカ派に位置づけられるジェームズ・ブラード・セントルイス連銀総裁の発言に反応して、アメリカの株式市場は大きく下落。債券市場では、景気減速とインフレ予想の低下を受けて長期国債金利が低下して、イールドカーブの大幅なフラットニング(平坦化)が起きた。

ブラード総裁ら2022年の利上げ開始を想定しているタカ派メンバーは、早々にテーパリング(資産購入金額の減少)を開始して、2022年にスムーズな利上げに移れるよう主張するかもしれない。FOMCメンバーで多くなっているタカ派シナリオが実現すれば、「FRBによる金融緩和徹底」の前提が変わるので、株式市場にとっては大きな変化である。

週明けの6月22日以降は、パウエル議長らが利上げ時期が遠いことに改めて言及した。アメリカの株式市場は大きく反発して、24日にS&P500は最高値を更新、一時大きく低下していた長期金利も下げ止まった。タカ派メンバーが描くシナリオと、FOMC主流派の見方には差があることを、金融市場は冷静に認識したのかもしれない。

それでも今回のFOMCをきっかけに、夏場にテーパリングの議論に着手するとみられるFRBの姿勢への株式市場の疑念は、簡単には払拭されないだろう。最高値を更新したアメリカの株式市場に対しては、目先は過度に楽観視しないほうがいいと見ている。

なぜ「FRBの早期利上げの実現性は低い」と見るのか

ただ、筆者はFRBの早期利上げが実現する可能性は低いと見ている。1つには、FOMCメンバーの主流派は2023年以降の利上げ開始を想定している。雇用回復が緩やかで完全雇用に相当距離がある状況では、現在のタカ派メンバーが主張するように、テーパリング開始を急ぐ蓋然性は高くない。

2つ目には、FOMCメンバーが想定する2022年、2023年までの好調な経済成長と、順調な失業率低下の想定が実現しない可能性があることである。具体的には、FOMCメンバーは、2023年には失業率の約3.5%までの改善を予想しているが、こうした完全雇用となれば2023年の利上げ開始が正当化されるということだろう。

ただ、実際には、財政政策による成長押上げ効果が減衰していくとみられる2022年央以降は、経済成長率は減速して、FOMCメンバーが想定するような失業率低下は実現しないと筆者は予想している。

つまり、株式市場が恐れ始めたタカ派メンバーの、2022年への利上げ前倒しが正当化されるような、アメリカ経済の過熱、そして持続的なインフレ上昇は実現しないだろう。いずれ、株式市場を揺るがしているタカ派メンバーの想定が後ズレするとともに、2023年後半以降のFRBの利上げ開始が想定される展開を筆者は予想している。

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