イラン核合意 再建へ歩み寄り不可欠
イラン大統領選で、反米保守強硬派のライシ司法府代表が当選した。保守穏健派のロウハニ大統領に代わって来月就任する。強硬派の政権は8年ぶりとなる。
当面の焦点は、イラン核合意の再建を巡る米国との協議が合意に達するかどうかだ。
ロウハニ政権は対イラン制裁解除で柔軟姿勢も示していたが、ライシ師は当選後の記者会見で全面解除を要求した。強硬姿勢を強めれば、早期合意は困難となろう。
そもそも核合意は、米国のトランプ前大統領が一方的に離脱を表明して枠組みが崩れた。バイデン政権は合意復帰を目指しているが、弾道ミサイル開発の制限など、イランに厳しい要求をしている。
中東情勢の緊張緩和に向け、両国は条件を突き付け合うのではなく、歩み寄る姿勢が欠かせまい。
大統領選では、最高指導者ハメネイ師が自身の後継者とされるライシ師の当選を後押しした。一方、ロウハニ師に近い穏健派の有力者は排除した。結果、投票率は50%を割り、過去最低だった。
選挙の公正性を欠いていたのは明らかだ。ライシ師が国民から信任されたとは言いがたい。
ライシ師の当選によって、司法と国会、行政の三権の長の全てを保守強硬派が占めることになる。反米の姿勢は強まろう。
トランプ前政権が発動した1500以上の制裁によって、イランの経済は低迷している。疲弊した国民は米国への反発と同時に、指導部への不満を募らせている。
指導部は中国とロシアに接近して、経済・安全保障の関係を強化しようとしている。しかし最大の懸案である経済回復は、制裁解除なくしてあり得ない。その認識が指導部に乏しいのではないか。
イランは、合意破りであるウラン濃縮拡大を続けている。濃縮施設に対する国際原子力機関(IAEA)の査察官立ち入りも制限している。挑発や駆け引きと受け取られる行為は慎むべきだ。
イランが対抗姿勢を強めた結果、米国では警戒感が広がる。制裁解除への反対も強まり、バイデン政権の判断の余地を狭めている。
合意の再建に向けた協議は欧州連合(EU)が米国とイランを仲介しているが停滞している。進展の軌道に乗せるには、国際社会のさらなる後押しが重要だ。
当初の核合意は、米国のほか英仏独中ロ、EUが関与して交渉を妥結させた。
中ロを含む関係国が再度協調する必要もあろう。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.