US Military, Don’t Drain Polluted Water into the Ocean

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有害性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を含む液体を、米軍が普天間飛行場から基地外に放出する処分方法を検討している。

 玉城デニー知事が「絶対に認めない」と言うのは当然だ。微量であっても有害物質を含む「汚染水」が県民の海に流れ込むことは許されない。

 米軍は自らの責任でもって処分方法を検討すべきだ。県民の健康に害が及ぶような手法は決して認められない。

 PFASが問題視されるのは、発がん性や出生時の体重に影響が生じる可能性など生き物への悪影響があるからだ。しかも自然の中でほとんど分解されず「永遠の化学物質」と称される。人をはじめ生き物の体内に蓄積することも分かっている。

 県内では昨年4月に米軍普天間飛行場から泡消火剤が流出し、PFASの中でも毒性が強いとされるPFOSやPFOAが宜野湾市内の河川で検出された。

 6月にはうるま市の米軍貯油施設からPFOSを含む汚染水が流出した。

 県民の健康に関わる重大事故だ。しかし米軍が積極的に詳細に関する情報を開示したとはいえない。二つの事故で県の立ち入り調査は実現したが、共に日米協議を経て認められた。県民の安全より米軍の基地管理権が優先される現状に県民は納得していない。

 米軍はPFASを含む「汚染水」を、処理した上で「公共下水施設を通じて放出」「日本の飲料基準に完全に準拠している」と説明している。

 だがPFASに関しては、研究自体が発展途上にあり、世界各国で基準が異なる。日本ではPFOS、PFOAの暫定指針値が1リットル当たり50ナノグラムなのに対し、米連邦環境保護庁は同70ナノグラムとしている。

 ところが米カリフォルニア州はPFOS6・5ナノグラム、PFOA5・1ナノグラムなど、より厳しい基準を設けている。

 米軍から正確な情報が得られない状態で「基準に完全に準拠」したことが確認できるのか不透明だ。

 バイデン米大統領は、汚染発生の責任者に浄化費用の負担などを求めたスーパーファンド法の規制対象に「有害物質」としてPFASを追加した。規制強化の流れから言えば、汚染源である米軍が自らの責任の下、本国に持ち帰って対処するのは当然である。

 ドイツ連邦環境庁の調査では、3歳から17歳の子ども1109人のうち、86%からPFOAが検出されたという。

 排水処理を介してPFOAが海に流出し、蓄積した魚類を食べたことが原因だ。

 米ファストフード大手のマクドナルドは2025年までに包装紙や容器からPFASを全廃すると表明した。

 本来、人の口に入るはずのない化学物質が海に流れ、魚などを通して人々の体に蓄積される事態を招いてはならない。新たな基地被害を生まないよう日米政府は米軍の処理方法を厳重に監視すべきだ。

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