米軍のアフガニスタンからの撤収完了を前にイスラム原理主義勢力タリバンの政府軍への攻撃が勢いを増しており、大きな不安を禁じ得ない。
米軍は20年にわたり拠点を置き、政府を支え、治安を守ってきた。撤収はアフガン国内のみならず、中央アジアを含む地域全体、あるいは世界を巻き込んだテロとの戦い全般に影響を及ぼさずにはおかない。
重大な岐路にあると認識すべきだ。アフガンがかつてのような内戦状況に陥り、「テロの温床」となる事態は絶対に避けたい。
米国は急ぎ、周辺国の協力を得て、バグラム空軍基地に代わる出撃拠点の確保など、いざというときの態勢を整えなければならない。日本を含む国際社会は、アフガンへの変わらぬ支援を表明し、関与の継続を明確にすべきだ。
バイデン米大統領は今年4月、米中枢同時テロから20年の9月11日までに撤収すると表明し、すでに9割以上が作業を終えた。
一方、タリバンは北部を中心に着実に支配地を拡大させ、劣勢に立たされた政府軍は1000人を超える兵士が国境を越え、タジキスタンに逃げる事態になった。
気がかりなのは、米軍撤収が早めのペースで着々と進められていることだ。内戦や政府崩壊を危惧する声も上がる中、慎重さを欠くのではないか。タリバンの攻勢に歯止めをかける必要がある。撤収がトランプ米前政権とタリバンとの合意に沿ったものとはいえ、「人権外交」を掲げるバイデン政権が、住民に厳しい規律を押しつけるタリバンとの合意を進めようとする姿勢に違和感を覚える。
バイデン氏は撤収表明の際、「中国との競争」に言及し、撤収で生まれる余力を対中国シフトに振り向ける考えを強調した。
その発想は正しいが、危うさもはらんでいる。撤収後のアフガンが混乱し、再度、本格介入を迫られれば、元も子もないからだ。
米軍不在となるアフガンには、中国、ロシアも無関心ではいられまい。中国は過激派流入を警戒する一方、アフガンを「一帯一路」の中核地域とみている。アフガンの北の中央アジア5カ国はロシアが「勢力圏」とみなす。
アフガンに介入するなら、この国の安定とテロとの戦いへの貢献につながるものでなくてはならない。やみくもに影響力拡大を競うなどもってのほかだ。
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