The White Paper on National Defense: The Threat of China Becomes a Reality

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急ピッチで軍備を増強する中国は、力による台湾統一も辞さない姿勢をあらわにしている。日本は、米国と連携し、不測の事態への備えを強化していくことが重要である。

 2021年版の防衛白書が公表された。深刻化する米中対立に焦点をあてたのが最大の特徴だ。

 日本の安全保障にとって台湾情勢の安定が重要だという認識を初めて明記し、中国が軍事的な行動に踏み切る可能性に言及した。能力、意図、実際の行動のいずれもがその危険性を裏付けている。

 軍拡を背景とした東シナ海、南シナ海での威圧的な活動をみれば、中国の脅威は現実化しつつあると言わざるを得まい。

 中国の習近平国家主席は共産党創設100年の演説で、台湾統一は「歴史的任務」だと強い決意を鮮明にした。中国軍は、台湾周辺空域に戦闘機を進入させるなど、軍事活動を活発化させている。

 台湾侵攻は可能だと中国に誤解させぬよう、日米は軍事的な備えを強めておく必要がある。

 日本は、安全保障関連法の整備によって限定的な集団的自衛権の行使が可能になった。実際にどのように対処していくか、日米共同作戦のあり方などについて、具体的な検討を重ねていくべきだ。

 尖閣諸島周辺では、複数の中国海警船が常態的に日本の接続水域を航行するようになり、24時間以上に及ぶ領海侵入も繰り返している。白書は、こうした活動を「国際法違反」だと強調した。

 力を背景とした一方的な現状変更の試みは容認できない。海上保安庁と自衛隊がさらに緊密に連携して対処することが不可欠だ。

 中国が台湾海峡や東・南シナ海で軍事力を行使するようなことがあれば、中国自身にとっても国益を大きく損なうことになる。

 日本は、中国に明確なメッセージを発し、自制を促していくことが大切だ。国際社会と連携して、法の支配に基づく国際秩序の維持に努めなければならない。

 白書は北朝鮮について、日本への核攻撃能力を既に保有しているとみられるとし、「重大かつ差し迫った脅威」と位置づけた。

 政府は、敵基地攻撃能力の保有も念頭に、「ミサイル阻止」の能力向上を図る新たな方針を策定してもらいたい。

 白書は、人工知能(AI)などの先端技術について、米中の競争が一層厳しさを増すとの見通しを示した。日本も、重要な技術の海外流出を防ぎながら、防衛装備品の研究・開発を進めてほしい。

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