Defense White Paper on US-China Conflict: Deterrence and Dialogue Are the 2 Keys

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米中対立下の防衛白書 抑止と対話が戦略の両輪

毎日新聞 2021/7/16 東京朝刊 835文字

 米国と中国が、政治や経済、安全保障などさまざまな分野で対立を深めている。そのはざまに立つ日本の防衛政策が問われている。

 2021年版の防衛白書は、米中関係を分析する項目を新たに設けたのが特徴だ。

 米中両国の覇権争いが激化し、軍事的なパワーバランスが変われば「インド太平洋地域の平和と安定に影響を与えうる」と警戒感を示した。

 注目されるのは、台湾をめぐる情勢について「日本の安全保障や国際社会の安定に重要」と初めて明記したことだ。

 中台の軍事バランスが軍事力を増強する中国側に傾いているのに加え、中国が台湾周辺での軍事活動を活発化させているため情勢が緊迫化していることを踏まえた。日米首脳も4月の共同声明で、52年ぶりに台湾海峡に言及した。

 中国は、透明性を欠いたまま国防費を大幅に増やしている。尖閣諸島周辺を含む東シナ海や南シナ海で威圧的な活動を続け、地域の不安定要因になっている。

 だが、脅威を声高に語り、抑止力を強化するだけでは不十分だ。米中対立が先鋭化し、日本がその最前線に立たされるようなことになれば、安全が脅かされる。

 緊張や対立があっても、それを制御し、紛争や衝突を回避する仕組みを作る必要がある。そのためには、さまざまなレベルでの対話や交流を通じて相互理解を深め、信頼を醸成することが不可欠だ。

 日中間では3年前に、両国の艦船や航空機が接近した際、現場レベルで連絡を取り合って事故を回避するためのルールが導入された。偶発的な衝突を避けるための危機管理システムだ。着実な運用で定着させたい。

 互いの意図を読み違えることがないよう、防衛当局間でいつでもやりとりができるホットラインの開設を急がねばならない。幹部同士の対話のチャンネルも増やすべきだ。

 日中関係の安定は、両国だけでなく、地域と国際社会にとっても極めて重要だ。

 日米同盟を基軸に抑止力を維持しつつ、中国との対話を続けて緊張を緩和する。日本は主体的に戦略を立て、重層的な取り組みを進める必要がある。

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