Cooperation between US, China and Russia Is Needed amid Afghan Chaos

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再び国際テロの温床になれば、世界にとっての悪夢だ。米軍の撤退によって力の空白が生まれつつあるアフガニスタンのことである。

 地理的に近い中国とロシアはとくに治安を心配し、関心を強めている。米国と中ロは対立が続いているとはいえ、危機感は共有しているはずだ。

 長い戦乱にあえぐアフガニスタンを、破綻(はたん)国家に戻してはならない。米中ロはこの問題での共通の利益を意識して、協力関係を築いてもらいたい。

 米バイデン政権は、当初9月11日としていた撤退期限を8月末に前倒しすると発表した。すでに最大の軍事拠点バグラム空軍基地から撤収し、作業全体の9割以上を終えたという。

 現地の混乱は深まる一方だ。米国の情報によると、反政府勢力タリバーンの支配地域は4月の約2割から、5割以上に拡大した。政府側の支配は2割に満たない。北部では政府の治安部隊千人以上が国境を越えて敗走するなど、周辺国にも影響が広がりつつある。

 中ロと中央アジア諸国などでつくる上海協力機構は外相会議を開き、共同声明で懸念を示した。中ロは米国を非難しつつ、声明は「政治対話と和平プロセス」の促進を呼びかけた。

 中国からすれば、隣接国からタリバーンの悪影響が及びかねない。ロシアも、旧ソ連だった中央アジア経由のテロの流入は困る。両国とも、地域情勢の安定を真剣に望んでいる。

 01年にアフガニスタンで戦争を始めたのは米国である。テロ組織の掃討が目的だったとはいえ、自国の都合だけでこの国を置き去りにするのは無責任だ。停戦を実現させ、秩序回復への道筋をつける責務がある。

 アフガニスタン政府とタリバーンは先日、和平協議を開いたが、物別れに終わった。力でまさるタリバーンに妥協の気配はない。米国は撤収による存在感の低下は避けられないが、周辺国を巻き込んだ多角的な外交努力を強めるべきだ。

 たとえば、タリバーンと関係の深いパキスタン、百万単位のアフガン難民を受け入れているイラン、中央アジアと民族的なつながりのあるトルコなどとの協働を探るべきだろう。

 いずれも米国との関係はぎくしゃくしているが、中ロは外交や経済面でパイプがある。国連などを通じて協調の枠組みをつくることも検討に値する。

 バイデン政権は中国を最も重大な競争相手と呼び、ロシアとの関係も冷戦後最悪とされる。だが、米国務省はアフガニスタンを「共通の関心のもとで協力できる分野の一つ」と呼びかけている。その実行の時だ。

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