<社説>米軍属強制性交未遂 徹底した再発防止策示せ
路上を歩いていた女性に性的な暴行を加えようとしたとして、北谷町内に住む米軍属の男が強制性交等未遂の容疑で逮捕された。無差別に女性を狙う犯行が住宅街で行われたことに、戦慄(せんりつ)を覚える。
思い起こすのは5年前にうるま市で起きた米軍属による女性暴行殺害事件だ。今回は未遂だったとはいえ、あの痛ましい被害を繰り返してもおかしくなかった凶悪な犯行だ。断じて許すことはできない。日米両政府は基地外居住の米軍人・軍属の外出制限など、徹底した再発防止策を示さなければならない。
県警によると、米空軍属の男は4月17日午前5時50分ごろ、本島中部の住宅街路上で、歩いていた女性に性的な暴行を加えようとした疑い。女性が所持品を振り回して抵抗したため、同容疑者は現場から逃走した。容疑者と被害女性に面識は一切ない。
2016年4月の女性暴行殺害事件も、元海兵隊員で事件当時軍属の男が、面識のないウオーキング中の女性を暴行目的で殺害し、本島北部の雑木林に遺棄するという凶悪犯罪だった。
日本政府はうるま市での事件の後、軍属の範囲を見直す日米地位協定の補足協定を米国と締結したほか、夜間巡回の「沖縄・地域安全パトロール隊」(通称・青パト)事業を開始し、犯罪抑制の取り組みとして強調した。
地位協定第17条は米軍人や軍属による事件や事故が公務中と判断されれば、原則的に米側に第1次裁判権があると定める。公務外でも容疑者の身柄が米側にある場合、起訴するまで米側が拘束する。基地内に逃げ込み証拠隠滅を図る事例もあり、犯罪者に特権を与える地位協定が米軍関係犯罪の温床となってきた。
在日米軍は、米政府が直接雇用していない「請負業者(コントラクター)」の従業員まで軍属に含んでいる。今回の容疑者も空軍の施設内で飲食店従業員として働き、基地の外に居住していた。イタリアやドイツの地位協定は、間接雇用の従業員まで軍属に含めることはない。
軍属に関する補足協定は、地位協定上の特権を与えられる軍属の範囲を狭めることが名目だった。ところが、外務省によると今年1月時点で国内の米軍属の数は1万2631人となり、19年から1351人も増えている。
青パト事業は実績の大半が泥酔者対応などで、県警に通報したうち米軍・軍属関係は0・6%にとどまる。米軍関係犯罪の抑止効果や費用対効果が疑問視されている。
1月には那覇市の路上で、米海兵隊員による強制わいせつ事件が起きたばかりだ。小手先の「綱紀粛正」では限界がある。米軍関係犯罪の元凶である日米地位協定を抜本改定するしかない。何より米軍基地の大幅削減によって、米軍人・軍属の数を減らすことが最も効果的な予防策だ。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.