イランの新大統領に反米保守強硬派のライシ師が就任し、近く新内閣が発足する。
焦点は、イラン核合意の再建を巡る米国との協議を再開できるかどうかだ。
ライシ師は国会の宣誓式で、米国に制裁解除を要求した上で「目的を果たすための外交を支持する」とも述べ、協議再開を否定しなかった。
核合意は米国のトランプ前政権が一方的に離脱し、制裁を復活したことから枠組みが崩れた。イラン側に不信感があるのは当然だ。
一方、離脱を批判するバイデン政権は核合意復帰を目指し、欧州連合(EU)の仲介で、ロウハニ前政権と間接協議を行った。しかし、妥結に至らず、6月以降中断している。
中東をこれ以上、不安定化させてはならない。イランの政権交代を機に早急に協議を再開させ、核合意を再建しなければならない。
制裁下のイランは、原油輸出が激減して、経済は疲弊し切っている。停電や水不足も発生し、抗議デモが起きている。
ライシ師は、欧米との関係を改善し、経済を回復軌道に乗せてこそ、国内が安定することをあらためて認識すべきだ。
外交経験がないライシ師は、後ろ盾である最高指導者ハメネイ師の意向に沿うとみられる。
懸念されるのは、ハメネイ師ら指導部の米国不信と強硬姿勢だ。
これまでの協議では、米側が制裁解除のリストを示すなど、順調に進むかに見えた。しかし制裁の全面解除を要求する指導部は妥協しなかった。
一方の米国は、議会の強硬論を受け、弾道ミサイル開発の制限も要求するなどハードルを上げた。
双方がこうした姿勢を続ければ、妥結は望めまい。
心配なのは、協議が停滞したまま、地域の緊張が高まる事態だ。イランは、核合意に違反するレベルにウラン濃縮を拡大し「核兵器級」とされるまで進めている。
危機感をあおり制裁解除を狙うようなことはやめるべきだ。敵対するイスラエルなどが反発し、偶発的な衝突に発展しかねない。
イランは制裁の長期化に備えて、中国やロシアとの関係を強化している。米国は核合意の当事国である両国と連携し、協議進展につなげることも必要だ。
中東情勢は日本への影響も大きい。日本はイランと伝統的に友好関係にあり、米国とイラン双方に関係改善を促す責任もあろう。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.