The Taliban Are Back: Oppression Must Be Stopped

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タリバンの復権 圧政の再来を食い止めよ

2021/8/19 6:00

 米国がアフガニスタンで始めた20年に及ぶ「米史上最長の戦争」が終結した。残されたのは米国の敗北とイスラム主義組織タリバンの復権である。

 銃を携えた戦闘員が大統領府を占拠して「勝利」を宣言する光景は、かつての圧政の再来を懸念させる。国際社会はそれを食い止めるため、タリバンに自制を求めていかねばならない。

 タリバンが政権を崩壊させ、再び実権を握った。4月末に駐留米軍の撤退が本格化すると周到に攻勢を仕掛けた。支配地域を徐々に拡大させ、今月末までの米軍完全撤退の隙を突き、瞬く間に首都を制圧した。

 バイデン米大統領はタリバンの攻勢について「想定外の早さ」と誤算を認めた。さらに兵力や装備で圧倒しながらタリバンの勢力拡大を阻止できなかったアフガン軍に触れ「アフガン人自身が戦おうとしない戦争で米兵が犠牲になってはならない」と批判した。

 だが、ここまで悪化した情勢を放置するのはあまりに身勝手である。そもそもアフガンで戦争を始めたのは米国だ。2001年の米中枢同時テロ後、テロを首謀した国際テロ組織アルカイダ指導者の引き渡しをタリバン政権が拒んだため軍事行動に踏み切り、政権を崩壊させた。

 米国が後ろ盾となったその後の政権は多民族国家を束ねることができないばかりか、汚職が横行し、多額の国際援助も使途不明になるなど混乱を極めた。それが国民の不信を買い、タリバン復権の素地となった。

 米国の世論は巨額軍事費を投入し、多数の人命を失うばかりで泥沼化した戦いの幕引きを求めた。歴代政権は軍の撤退を急ぎ、情勢を見誤った。拙速な判断の代償はあまりにも大きい。

 米国が尊ぶ民主政治をアフガンに定着させ、社会の安定と国の自立を見届ける。それが果たすべき責任だったはずだ。

 政権樹立を目指すタリバンは「誰にも報復しない」と軍や他の勢力との融和を図る意向を示した。戦闘員が略奪や迫害に走り、国内外の恐れを増幅させないようにすべきである。

 かつてのタリバン政権は国際テロ組織との関係に加え、極端なイスラム教解釈に基づき女性や少数派を抑圧する政策で批判を浴び、国際社会で孤立を深めた。その教訓からか、今回は女性の権利尊重も強調する。

 こうした穏健な姿勢が政権樹立後に国際社会から承認を得るための見せかけなのか、それとも実体を伴うものなのか。加えて、アフガンが再び「テロの温床」になりかねないという懸念も根強い。国際社会はタリバンの真意を見極め、平和的な政権構築を促す必要がある。

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