〈社説〉アップルの修正 市場の公正さ どう保つのか
巨大IT企業の米アップルが、アプリ開発企業に課している手数料のルールを修正すると決めた。
独占禁止法違反の疑いがあるとされ、公正取引委員会が審査していた。その指摘を踏まえた対応だ。スマートフォン上で、アプリ企業が消費者を直接課金の仕組みへと誘導するのを容認するという。
アップルは日本で最も売れているスマホ「iPhone(アイフォーン)」のメーカーだ。そのアプリを供給する企業はアップルのルールに従わざるを得ない。
アップルを通した決済でアプリ企業が支払う手数料は最大30%。「アップル税」と呼ばれ、アプリ企業に不満が蓄積していた。
デジタル関連サービスの業界には「勝者総取り」の性質があり、寡占化が進んでいる。スマホを動かす土台のシステムは現在、アップルと米グーグルの2社が世界市場を事実上独占している。
土台を担う企業に勝手なルールを許していては、利益がますます集中し、健全な競争を維持することができない。高額な手数料は消費者負担にもつながる。
今回の修正は来年から全世界で適用される。公取委が厳しい姿勢で臨んだ成果と言えるだろう。膨張するデジタル市場で公正さをどう確保していくか。今後も市場の状況を注視しながら対策を打っていかねばならない。
各国も規制当局などが巨大ITへの対応に力を入れている。
韓国では8月末、アップルとグーグルが自社の決済システムを強制できないようにする関連法案が可決。巨大ITの本拠地である米国でも7月、37州・地域の司法長官が独禁法違反でグーグルを連邦地裁に提訴している。
巨大IT側は、強まる規制強化の動きに硬軟の対応を織り交ぜながら収益維持を狙っている。
アップルによる今回の修正も、対象が書籍や音楽、動画を配信するアプリに限られている点に注意する必要がある。
同社で現在、手数料収入の最大の源泉とみられるのはゲームであり、それが含まれていない。一定の譲歩姿勢を示すことで批判をかわし、抜本的な見直しは阻止する狙いがあるのではないか。
コロナ下の対応で各国が赤字財政を強いられる一方、巨大IT各社は、巣ごもり需要も取り込んで業績を伸ばし続けている。
国家権力に匹敵する影響力を持ち始めた企業の独占をどう規制していくか。大きな課題として向き合っていかねばならない。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.