Quad Summit: Let’s Increase Cooperation among Democracies

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 国際社会が直面している課題について、基本的価値観を共有する民主主義国が、幅広い分野で協力を深めていくことを確認した意義は大きい。

 日米豪印4か国の協力枠組み「クアッド」の首脳会談が、米ワシントンで開かれた。3月のオンライン会談に続き、初めての対面による開催である。今後、定例化するという。

 菅首相は冒頭で、対面での会談について「4か国の強い結束と自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンへの揺るぎない確約を示すものだ」と語った。

 共同声明では、新型コロナウイルス対策やインフラ整備で途上国を支援することを強調した。高速・大容量通信規格「5G」の展開、宇宙利用、サイバー防衛などでも協力を拡大すると明記した。

 中国は、経済や先端技術分野で影響力を強め、覇権主義的な行動を続けている。ルールに基づく自由な秩序を維持するためには、4か国の連携強化が不可欠だ。

 首脳の合意を踏まえ、具体的な協力を重ねなければならない。

 3月の会談では、コロナワクチンを共同で途上国に供与することで合意したが、インドの感染爆発で足踏みしている。改めて仕切り直して、東南アジア各国などでの感染防止に努力してほしい。

 経済安全保障分野でも、さらに連携を進めたい。

 半導体をはじめとした先端技術が流出したり、重要物資について中国への依存度が高まったりすれば、安保上のリスクとなる。今回、「安全な供給網」を確保する方針で一致したことは評価できる。

 共同声明では、東シナ海と南シナ海における「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦」に懸念を表明した。中国に対し、一方的な現状変更の試みは容認できないと繰り返し伝えていくべきだ。

 バイデン米政権は4か国首脳会談に先立ち、米英豪による新たな安全保障協力の枠組み「オーカス」を創設した。日本も、情報分野などでの協力のあり方を考えていく必要がある。

 バイデン大統領は来月のG20(主要20か国・地域)首脳会議の際、対面による初の米中首脳会談を検討しているという。同盟国や友好国と調整したうえで中国に対処する方針は妥当である。

 菅首相が退陣を表明した後、北朝鮮や中国、ロシアが軍事的な挑発を強めている。首相は、日本が内向きになっているという誤解を与えないよう、切れ目のない政権移行に努めてもらいたい。

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