米国との関係改善を模索する中国の動きが最近目立っている。しかし、中国が軍事力で台湾などを威嚇する姿勢を続けるようでは、状況の改善は望みにくい。
習近平国家主席は9月、バイデン米大統領との電話会談で「関係の早急な安定」を訴えた。国連総会演説では「石炭火力発電所の新たな輸出の停止」を表明した。
輸出停止は米国の要求に応じたもので、気候変動問題での協調を世界にアピールしたと言える。
米中対立の象徴とみなされていた、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長の拘束問題も決着した。孟氏が米当局との司法取引に応じ、約3年ぶりに帰国した。
中国は米国との軍当局間の対話を維持していくことで合意し、対面での米中首脳会談の実現に向けた調整も進められている。
強硬一辺倒だった中国の姿勢がなぜ変化しているのか。
習氏は来秋の共産党大会で最高指導者としての続投を決めようとしている。「史上最悪の米中関係」が党内での習氏批判の口実とならないよう、対立が制御不能に陥るのを避けたいのだろう。
来年2月には北京五輪がある。米欧諸国は少数民族ウイグル族への中国の人権侵害を理由に、政府代表団の派遣を見送る「外交的ボイコット」を検討している。
習氏は、五輪「成功」には、対米関係の一定の改善が必要だと判断しているのではないか。
米国も、軍事、技術分野では中国との競争にのぞむが、気候変動や感染症対策などでは協力が必要だと強調してきた。バイデン氏と習氏が膝をつき合わせ、意思疎通を深めることは重要だ。
一方で、中国は南シナ海や東シナ海での軍事挑発や、香港などでの人権弾圧をやめていない。台湾の防空識別圏には今月に入って多数の中国軍機が集中的に進入し、前例のない威嚇を続けている。
米英豪による安全保障の新たな枠組み「オーカス」の創設や、日米豪印の「クアッド」の連携強化は、こうした現状に対処しようとするものだ。
習氏は、法の支配や普遍的価値観を軽視する行動が、中国への圧力強化につながっていることを認識せねばならない。
岸田新政権は、米国と連携し、対中抑止力の強化に努める必要がある。中国の台湾への威嚇は地域の安定を損なう行為であり、日本としても看過できない、との立場を明確に示すべきだ。
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