Japan’s Choice: Foreign Policy at a Turning Point: Confrontation or Coexistence?

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アジア情勢が緊迫し、地球規模の問題が深刻化している。日本の外交・安全保障政策はどうあるべきか。衆院選の論戦の焦点だ。

 自民党は「力の外交」を前面に打ち出す。防衛費の「国内総生産(GDP)比2%以上」への増額を視野に入れ、先端技術競争を見据えた経済安全保障を重視し、「対抗」の姿勢を強調する。

 立憲民主党は「ソフトパワーの外交」の色彩が濃い。平和主義と専守防衛という日本独自の原則に立脚する。経済安保を重視する立場は自民党と同じだが、「共生」を目標に描く。

 与野党のアプローチは異なるが、共通するのは中国への警戒感だ。日本外交の最大の課題であるのは間違いない。

緊迫する東アジア情勢

 米中関係は緊迫している。台湾を巡る攻防を想定した軍事演習を双方が実施した。米英などが空母3隻を展開したのに対し、中国は核兵器搭載可能な爆撃機と数十機の戦闘機を繰り返し飛行させた。

 アフガニスタンから撤退した米国がインド太平洋で軍事行動や外交を活発化させているのは、台頭する中国に対抗する狙いがある。

 日本の対中戦略は、米国と連携して抑止力を高め、衝突が起きないようにすることを基本としてきた。これまで以上に主体的な外交が求められている。

 日米同盟を外交政策の基軸とすることでは多くの政党が一致する。議論が分かれるのは日本が担う軍事的な役割だ。自民は、遠く離れた敵地を攻撃できる能力の保有を掲げる。立憲はコストや実効性の点から疑問視している。

 軍事力で威嚇し、現状を変更しようとする中国の姿勢には厳しく対処する必要がある。そうであっても勢いにまかせて軍事力を拡大することには慎重であるべきだ。

 安保体制において「日本は盾(防護)、米国は矛(攻撃)」の役割を果たしてきた。日本が矛の領域に踏み込めば、周辺国が警戒するのは避けられないだろう。

 問われるのは、日本独自の外交の構想力である。中国に対抗しつつ、この地域の安定をどう図るか。困難な課題を克服するための議論を欠いている。

 中国との関係改善がアジア地域の安定につながることは言うまでもない。共通の懸案を提起して対話の糸口を探り、定期的に協議し、首脳外交につなげる。そのための戦略が必要だ。

 米国は、台湾における衝突を回避する方策を中国と模索し、貿易問題を巡る米中閣僚級協議を再開した。年内の首脳会談開催でも合意している。

 こうした対話に向けた努力を日本はしているのだろうか。

 グローバル化の下で相互依存が深まっており、中国を孤立化させるような政策は現実的ではない。包囲網を構築し、にらみ合うだけでは打開できない。米中が頭越しに再接近するようなことがあれば、立場を失うのは日本だ。

国際秩序の安定に役割

 岸田文雄首相は「信頼」に基づく外交を信条とし、「聞く力」があると強調する。そうであるなら対話を探るべきだ。来年は日中国交正常化50年にあたる。時の利を生かす知恵があっていい。

 「世界の中の日本」という視点も希薄だ。

 国際社会の共通の課題である気候変動や感染症に取り組む重要性は各党とも認める。だが、具体的な行動計画は明確ではない。

 米国が気候変動対策でしきりに中国との接点を探るのは、飢餓や紛争につながる安全保障上の脅威としてとらえているからだ。

 地球規模の問題は米中や日本など経済大国の主導なくして解決できない。その役割を果たす責任が日本にはある。

 とりわけ核軍縮は存在感を示すことができるテーマだろう。

 来年3月に予定される核兵器禁止条約の締約国会議について、立憲など野党だけでなく、与党の公明党も「オブザーバー参加」を訴える。だが、自民は否定的だ。参加を通じて核保有国と非核保有国の「橋渡し」をすることは意義があるはずだ。

 世界の課題はサイバー空間や宇宙にまで広がる。新たなルールづくりを主導することもできるだろう。国際社会で汗をかいてこそ、地域での信頼も高まる。

 支持層にアピールすることばを公約にちりばめても、それを実現するためのしたたかな外交戦略が伴わなければ意味がない。

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