沖縄基地問題/負担軽減の具体策を語れ
米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設で、政府が沿岸部に土砂を投入したのは2018年12月だった。埋め立てが本格化して初めての衆院選となる。
工事を強行する安倍、菅政権に対し、辺野古移設に反対する玉城デニー知事の当選や、埋め立て反対が7割を超えた19年の県民投票などで、沖縄の民意は拒否を示し続けてきた。移設が基地負担を固定化し、貴重な自然を損なう恐れがあるためだ。
住宅地に囲まれた普天間飛行場の危険性除去は喫緊の課題だが、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と固執してきた。
沖縄には在日米軍専用施設面積の7割が集中する。日本の安全保障に深く関わる存在であり、一地域の問題ではない。地元の民意に政治がどう向き合うのかを問う選挙である。
にもかかわらず、米軍基地問題が大きな争点になっていないのは残念だ。
辺野古の埋め立て海域では軟弱地盤が見つかり、工期が大幅に延びた。普天間返還は当初、1996年の日米合意から5~7年後の予定だったが、2030年代にずれ込む見通しになった。普天間の危険性の「早期除去」は遠のくばかりである。
自民党は「辺野古移設や在日米軍再編を着実に進める」と公約し、公明党も「目に見える形での負担軽減を実現」とする。だが、工事を進めながら住民と協調を図る方策は見えない。
一方、立憲民主党や共産党、社民党、れいわ新選組は共通政策で「移設工事の中止」を掲げる。国民民主党は「埋め立てはいったん停止」と訴える。地元民意に沿った公約と言える。
ただ、立民は「基地のあり方を見直す交渉を開始する」、れいわは「海兵隊には米本土への移転をお願いする」とするのみで、中止後の道筋は明確ではない。各党は負担軽減の具体策を語り、論戦を重ねてほしい。
忘れてはならないのは、米兵の犯罪捜査もままならない不平等な日米地位協定の存在だ。自民と公明は協定のあるべき姿を目指し、野党も見直しを求める。問題意識を共有するならば、選挙後の国会で早急に議論すべきだ。
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