America and China: Don’t Lose the Chance for Nuclear Disarmament

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〈社説〉米中の核兵器 軍縮の機運盛り返さねば

 中国に対する強い警戒心と焦燥感をあらわにしている。

 米国防総省が先日公表した年次報告は、中国が2030年までに千発の核弾頭を保有する公算が大きいと指摘した。

 軍部は、中国の軍拡が今のペースで進めば軍事力で米国を上回るとみる。自国だけでなく、日本を含む同盟国を巻き込んだ対抗の必要性を主張している。

 今年1月時点の核弾頭保有数はロシアが6255、米国は5550、中国が350で続く。

 米ロの軍備管理の枠外にある中国は、制約を受けずに核戦力を増強してきた。米ロが求める軍縮対話にも応じようとしない。

 中国は今夏、核弾頭を搭載できる極超音速兵器を発射し、地球を周回させたとみられている。音速の5倍以上の速さで低空を飛ぶため、米軍のミサイル防衛網をすり抜ける恐れがある。

 同じ実験に失敗した米国は「軍事バランスを一変させかねない」と危機感を募らせる。

 年次報告は空中発射、大陸間、潜水艦発射―の三つの弾道ミサイルからなる中国版「核の3本柱」構築の可能性も指摘した。

 バイデン政権は策定を進める新たな核戦略指針で、核保有の目的を核攻撃抑止と報復に限る「先制不使用」を検討事項に挙げた。これに、日本やオーストラリア、北大西洋条約機構の加盟国がそろって待ったをかけた。

 先制不使用は中国も宣言しており、軍縮への大事な一歩となる。中堅国が中ロへの抑止力低下を理由に、オバマ政権時に続いて「障壁」になっている。

 特に日本は、中国と経済で深く結び付く。台湾を巡る米中の衝突回避は死活問題で、双方に保有兵器の透明化を迫り、軍縮を要請する立場にあるはずだ。

 自公政権は逆に、中国をにらんで軍備拡張を推し進め、友好国との軍事連携を強めてきた。追従どころか、米国内では「日本が米政権の右傾化をあおっている」との批判まで出てきている。

 米軍と一体化して日本自らが軍拡に加われば、中国やロシア、北朝鮮を刺激する。岸田文雄政権が「毅然(きぜん)とした外交」を唱えたところで、拉致や北方領土といった懸案を改善できるはずもない。

 習近平指導部は対米関係の安定化へかじを切り始めた。バイデン政権も、国内の分断回避に対中強硬策を利用している節がある。両国が妥協点を探り始めたとき、日本は国際社会の立ち位置を失う事態にもなりかねない。

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