中国が強引な海洋進出や台湾への威嚇を続け、米国主導の国際秩序に挑む構図は当面変わりそうにない。最低限、米中の対立を不測の衝突につなげない具体策が必要だ。
米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席がオンライン形式で会談した。
バイデン氏は、米中の首脳には競争が衝突に発展する事態を防ぐ責任があると強調した。習氏も、米中が協力し、安定した関係を築く重要性を指摘した。
両氏の発言は、米中の覇権争いがそれほど激しく、緊張が高まっていることの裏返しと言える。
今回の会談でも、台湾情勢や中国の人権侵害、不公正な貿易慣行を巡る溝は埋まらなかった。
バイデン氏は、台湾海峡周辺で中国の軍事挑発が増加していることを念頭に、「米国は現状を変更しようとする一方的な試みに強く反対する」と明言した。
これに対し、習氏は、「台湾が米国に依存して独立を図ろうとしている」ことが緊張の原因だと主張した。事態が一線を越えた場合の「断固たる措置」にも言及し、中国が台湾統一へ武力行使する可能性を示唆したという。
これでは、中国が本気で対米関係の改善を目指しているとは到底言えない。東シナ海や南シナ海も含め、一方的な現状変更を図る動きを自制しなければ、各国の不信は 払拭(ふっしょく) できないだろう。
米国が日欧、インド、豪州などとの関係強化を通じて国際秩序の維持を図っているのは賢明だ。気候変動や感染症対策で中国との協力は必要だが、ルールに基づく国際システムや人権など普遍的価値観を損なう妥協は許されない。
習氏は、米国との決定的対立を避けながら、中国を米国に匹敵する軍事、経済、技術大国に押し上げる路線を堅持している。
米国との協調を唱えても、その真意は、国内に向けて対米関係をコントロールしていることをアピールし、国力向上までの時間を稼ぐことにあるのではないか。
習氏の長期体制を固める来秋の共産党大会に向けて、中国は内向きの姿勢を強めており、習氏の外遊は2年近く途絶えている。
諸外国の首脳が習氏と直接意思疎通する機会がほとんどないのでは、世界情勢全体が不安定になりかねない。習氏は外交を本格的に再開し、大国の指導者としての責任を果たすべきだ。
日本は米中の緊張関係が続くと想定し、地域の平和維持への努力を強めねばならない。
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