America Must Prevent Deepening Rifts in Its Response to Beijing Olympics

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米国の北京五輪対応 亀裂深めない知恵が必要

バイデン米政権が、来年2月から始まる北京冬季五輪・パラリンピックに政府代表を派遣しないと発表した。「外交的ボイコット」といわれる措置だ。

 中国の新疆ウイグル自治区などでの人権問題を理由に挙げている。対象は政府関係者のみで、選手団は予定通り派遣される。英国や豪州なども同様の措置を検討中という。

 一方、中国は「デマで五輪を妨害しようとしている」と反発し、対抗措置を取る意向を示している。しかし、国際社会の懸念を顧みなかった姿勢が招いた事態である。批判に耳を傾ける度量が求められる。

 対立がエスカレートすれば、影響を受けるのは選手たちだ。亀裂を深めないよう、各国が知恵を絞らなければならない。

 開幕まで2カ月を切る中、日本も対応を迫られる。岸田文雄首相は「総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断する」と述べた。

 2014年にロシアで開かれたソチ冬季五輪で、日本は独自の対応を取った。プーチン政権が同性愛者に差別的であることを理由に、米欧首脳の多くは開会式参加を見送ったが、当時の安倍晋三首相は出席した。

 五輪は本来、平和の祭典である。にもかかわらず、政治が持ち込まれ、意義が損なわれた苦い経験がある。

 1980年のモスクワ五輪で、米国はソ連のアフガニスタン侵攻を理由に選手団を派遣せず、日本や西ドイツなどが追随した。続く84年ロサンゼルス五輪は、多くの東側諸国が対抗措置として参加を見合わせた。

 国連総会では、夏冬の大会ごとに「五輪休戦」が決議されている。期間中はすべての紛争を休止するという古代オリンピックの故事にちなんだものだ。

 北京五輪でも、中国をはじめとする173カ国の共同提案で決議が採択された。だが、中国を念頭に連携を強める日米豪印の4カ国は提案に加わらなかった。

 冷戦時代、五輪は東西対立の影響を受け、選手たちが国際政治に翻弄(ほんろう)された。米中の関係が悪化し、「新冷戦」といわれる今こそ、平和と協調という五輪精神を追求しなければならない。

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