A Cool Reception to the Close of the Summit for Democracy

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バイデン米大統領が主催した「民主主義サミット」が10日、閉幕した。バイデン氏は演説で「世界各地に民主主義の花を咲かせる」と成果を称賛したが、共同声明などは出されず、米国の専門家からは「学会の発表のようだ」と冷めた見方もでている。中国やロシアなどは強く反発し、招かれなかった国々の結束を促すリスクを指摘する声もある。

 バイデン氏は111の国・地域の指導者を招待。当初からついて回った批判は、強権的な指導者たちの招待だ。各国首脳らのビデオメッセージでは、フィリピンのドゥテルテ大統領も「(フィリピンでは)報道の自由、表現の自由は完全に享受されている」、ブラジルのボルソナーロ大統領も「世界中の民主主義を強化するためにブラジルは頼りになる」と胸を張った。

 演説でバイデン氏は来年、2回目のサミットを対面式で開く考えを示した。米政権によれば、各国首脳らが今回約束した取り組みは、1年後のサミットで再び各国が進捗(しんちょく)度合いを報告する。しかし、拘束力のある共同声明などはなく、各国首脳らの言いっ放しで終わる可能性もある。

 サミットの狙いの一つは、バイデン氏が「専制主義国家」と位置づける中ロへの牽制(けんせい)にあった。10日には人工知能(AI)などの急速な発展が専制国家に有利に働いているとの懸念も共有された。米国は、中国がAIを駆使した監視・検閲技術を新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧に使ったり、他の専制国家に輸出したりしているとして危機感を抱く。

 民主国家の自由な言論・ネット空間が弱点になり、専制国家の偽情報などによる世論工作にさらされているとの見方も根強い。開発援助を担う米国際開発局(USAID)のサマンサ・パワー長官は10日、「権威主義者たちが、ソーシャルメディアやネット統制、AIによって力が強まると学んでしまった」と述べ、安全なデジタル環境の整備のため、USAIDが年2千万ドル(約23億円)を拠出する方針を示した。米財務省も閉幕にあわせたタイミングで、顔認証技術で知られる中国企業センスタイムに対し、新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧に加担しているとして、米国からの証券投資を禁じる制裁を発表した。

 バイデン政権にはサミットで、中ロ両国に対する緩やかな有志連合を作り上げる思惑もあったが、民主主義を大義名分にしたため、中ロのみならず、サウジアラビアなど大半の中東諸国を除外することになった。米国が招待国を選別することに、「各国に(どちらの陣営につくか)選択を迫るもの。極めてリスクのあるゲーム」(米ジョージ・ワシントン大のマーリーン・ラルエル教授)という懸念もつきまとった。

 実際、中国と関係を深めているパキスタンは欠席。招待されなかった側では、中ロはもとより、ハンガリーなども反発している。米国に招かれなかった国同士が連携を深める可能性もある。(ワシントン=園田耕司、青山直篤、高野遼)

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