Nuclear Weapons Ban Treaty: The Time Has Come for Kishida To Show His Resolve

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今月発足したドイツの新政権が、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加する方針を打ち出した。同様に米国の「核の傘」の下にいる日本は慎重姿勢を崩しておらず、対応の違いが浮き彫りになった。

 新政権は世界的な核軍縮に「主導的な役割を果たしたい」との立場である。被爆地・広島選出の岸田文雄首相は今こそオブザーバー参加にかじを切り、その覚悟を示すべきだ。

 核兵器の保有、使用や威嚇まで禁じる核禁条約は今年1月に発効した。これまでに57カ国・地域が批准しており、来年3月には初の締約国会議が開かれる。

 条約を批准していない国もオブザーバーとして参加し、意見を表明できる。米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の加盟国では、ドイツとノルウェーがこの方式で参加するという。

 核軍縮をライフワークとする岸田首相は「核なき世界への出口とも言える重要な条約」と評価している。ところが、オブザーバー参加には消極的だ。米国が反対しているという事情がある。

 首相がより重視しているのは、米国など核保有国も参加する核拡散防止条約(NPT)だ。年明けには約7年ぶりの再検討会議が予定される。

 首相は核軍縮などを担当する補佐官に被爆2世の寺田稔衆院議員を起用した。再検討会議に先立って関係国に派遣し、核廃絶の機運を高めようという狙いだ。

 ただし、前回の会議は関係国の溝が埋まらず、最終文書を採択できなかった。米中、米露の対立は激化しており、今回も具体的な進展のめどは立っていない。

 日本は中露や北朝鮮という核保有国に囲まれている。多国間の集団安全保障体制が確立している欧州とは安保環境が異なる。

 だが、唯一の戦争被爆国である日本には、核廃絶に向け、あらゆる外交努力を尽くす使命があるはずだ。

 核禁条約は被爆者らの訴えが結実したものだ。オブザーバーとして議論に参加し、その成果をNPT再検討会議に反映させて核保有国に働きかける。そうした「橋渡し」こそが、日本が果たすべき役割である。

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