<社説>3県重点措置へ 「米軍由来」を防がねば
新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、沖縄、山口、広島三県が「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請した。在日米軍基地での甘い防疫態勢が市中感染の拡大につながったとみられる。
日米地位協定などにより、米軍関係者には日本の出入国管理も検疫も及ばない。当面の対策に万全を期すのはもちろん、地位協定など在り方も見直さなければ「米軍由来」の感染拡大は防げまい。
沖縄県では昨年十二月初旬、米国から嘉手納基地経由でキャンプ・ハンセンに到着した海兵隊部隊で集団感染が発生。基地に勤める日本人従業員の陽性者から県内初のオミクロン株が検出された。
県内の感染者はその後急増し六日の新規感染者は九百八十一人。四日間で約二十倍となり、オミクロン株への置き換わりも進む。
在日米軍基地では沖縄に次いで岩国(山口県)での感染者数が多く、三沢(青森県)、横須賀(神奈川県)、横田(東京都)などでも感染拡大が判明した。
米軍は軍用機で在日基地に赴く部隊に出発前、到着後のPCR検査をほぼ行っていなかった。到着後二十四時間以内の検査開始はキャンプ・ハンセンでの集団感染判明から二週間後で、沖縄県が求めたゲノム解析にも非協力的だ。
県内の繁華街では米兵の姿が目立ち、酒気帯び運転容疑での逮捕事案も相次いだ。日本政府は米軍基地内での感染拡大が地域に波及しているか否か明確にしていないが、米軍側の甘い防疫態勢と地元への配慮の欠如が、駐留先での感染拡大を招いたのではないか。
沖縄県の玉城デニー知事は、オミクロン株に感染した基地従業員の遺伝子分析などから「米軍が大きな起因」との見方を示している。
日本政府は当初、米軍側に強く抗議することもなかった。林芳正外相は六日、ブリンケン米国務長官との電話会談で「感染拡大防止措置の強化と徹底」を求めたが、遅きに失したのではないか。
政府は米軍に対し、感染経路や感染者の症状、隔離状況などを自治体に情報提供し、基地外への感染拡大防止のための要請に従うよう早急に求めるべきだ。
ドイツ、イタリアは駐留米軍に対し、検疫に関する国内法適用や基地立ち入りの権限を持つ。日米地位協定などが防疫の障害となっているなら、日本政府は改定を提起すべきだ。喫緊の課題である。
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