Facebook and the Attack on the Capitol: Signs Began Shortly after the Election

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2021年1月6日にトランプ米大統領(当時)の支持者らがワシントンの連邦議会議事堂を襲撃した事件は、フェイスブック(FB、現メタ)がトランプ氏のアカウントを停止するきっかけとなった。朝日新聞が入手した同社の内部文書からは、事件前からトランプ氏支持者らの動きに危機感を抱きながら、対応が後手に回った様子が浮かぶ。

FBにとって、20年11月3日の米大統領選への対応は課題だった。前回16年の大統領選でFBを通じて虚偽情報が拡散されたと指摘され、20年の大統領選でもトランプ氏の発言などに何度も警告などを出した。効果あってか、投票日は大きな混乱がなかった。

 だが、開票が進みトランプ氏の劣勢が判明すると、根拠のない「不正投票」の主張がすぐ拡散した。選挙直後に支持者が始めた「ストップ・ザ・スチール(盗みを止めろ)」という運動を検証したFBの内部文書は「大きな問題がなく選挙が過ぎたという満足感は、怒りの暴言と陰謀論の増加で次第に変化した」と振り返っている。

 「ストップ・ザ・スチール」と呼びかけた最初のグループは、投開票日の翌日未明に登場した。コメントでヘイト(憎悪)や暴力への呼びかけが目立ち、FBはこのグループを停止したが、類似のグループがすぐ急増したという。内部文書は「対応は断片的だった」「このフレーズがどれだけ焦点となり、暴力を使って選挙の正当性を否定する動きにつながるかは後まで分からなかった」としている。

 新しくできたグループもヘイトや暴力の扇動、選挙の正当性否定が多くみられた。また、グループに加わる人数の増加には、何百人も招く一部の「スーパー招待者」の存在があり、お互いにつながっている場合もあった。

 だが、内部文書によるとFBは個別のグループを監視していたが、まとまりのある運動としてはみていなかった。このため、FBの基準に違反した個別グループを削除できても、運動全体への対応は遅れた。内部文書は「議事堂襲撃事件の後、まとまりのある運動だと気づいた」としている。

 この内部文書は、議事堂襲撃につながった一連の動きでFBが多くを学び、同様の事象が起きた場合はより効果的に対応できる、としている。一方で「選挙結果の正当性を否定する動きは新しい分野で、方針や知識があまりなかった」として、想定外の問題に直面したことが、対応の遅れにつながったと認めている。

米ワシントン・ポスト(WP)と調査報道専門機関のプロパブリカは22年1月、誰でも閲覧できるFBグループの情報などを分析した結果、大統領選投開票から議事堂襲撃までの間に選挙結果の正当性を攻撃する投稿が少なくとも65万件あり、1日平均で約1万件に上ったと報じた。

 WPなどによると、FBは米政治に関するグループの中で過激な言動が増えていると危機感を抱き、大統領選前にタスクフォースを立ち上げたという。この結果、陰謀論集団「QAnon」などに関連するグループは大量に削除されたが、投開票日後にタスクフォースは解散し、グループの取り締まりも厳しさが和らいだという。再び削除が増えたのは、襲撃事件の後だった。

 また、FBが過去に、選挙に関連して力を入れてきた虚偽情報への対策との違いも指摘されている。内部文書は「ある運動が草の根の手段で動いているにもかかわらず、本質的に有害で私たちの基準に反する場合にどうするのか。本物の運動がヘイトを支持し、自由な選挙の正当性を否定する場合にどうするのか」との問いかけを示し、FBとして対策を講じる必要があるとしている。

 一連の内部文書は、FB元社員のフランシス・ホーゲン氏の支持者によって米証券取引委員会(SEC)に開示され、一部を黒塗りするなどして米議会に提供された。議会向けに修正された文書を、朝日新聞など世界の報道機関が提供を受けた。(ニューヨーク=中井大助)

2020年米大統領選をめぐるフェイスブック(FB)の動き

 20年6月26日 ヘイトスピーチなどの対策強化を発表

   8月19日 陰謀論集団「QAnon」などに関連するグループが暴力に関する話し合いをしていれば削除する方針を発表

   9月3日 大統領選の結果の正当性を否定しようとする投稿などにラベルをつける方針を発表

   10月6日 QAnonに関係するグループはすべて削除すると発表

   10月7日 大統領選で特定の候補が結果を否定した場合のラベルなどを発表

   11月3日 大統領選の投開票日

   11月4日 「ストップ・ザ・スチール」のグループが設けられる。FBが翌日削除するが、類似グループが次々とできる

   11月7日 バイデン前副大統領の当選が確実に。トランプ氏は結果を受け入れず、ツイッターやFBで選挙不正を訴える

 21年1月6日 トランプ氏の支持者らが連邦議会議事堂を襲撃

        トランプ氏のアカウントを24時間凍結

   1月7日 トランプ氏のアカウントを無期限停止

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