1 Year after Taking Office, Biden Needs To Deepen International Cooperation

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<社説>米政権発足1年 国際協調へ対話深めよ

米国のバイデン大統領があす就任1年を迎える。

 トランプ前大統領の「自国第一主義」から国際協調への回帰を掲げて、国内では社会の融和を目指しているが、いずれも道半ばと言える。

 中国やロシアとの対立は根深い。イランとの核合意再建の交渉は進展していない。北朝鮮はミサイル発射を繰り返している。

 国内では新型コロナウイルスの1日の新規感染者が数十万人に上る。記録的な物価高も重なり、国民の不満は膨らんでいる。

 まさに内憂外患だ。11月の連邦議会の中間選挙で政権は審判を受ける。バイデン氏は外交、内政の両面で指導力を高め、分断を修復し、協調を確立する米国の姿を示してもらいたい。

 バイデン氏は「民主主義国家と専制主義国家との争い」の渦中との国際認識を示し、中国を「唯一の競争相手」と位置付ける。

 民主主義陣営の盟主を自任して開催したのが昨年の「民主主義サミット」だった。中国やロシアなどは招かなかった。

 世界を親米と親中ロの陣営に分け、各国に選択を迫るようなやり方では、国際協調は友好国や同盟国との間にとどまり、分断は逆に深まろう。

 アフガニスタン駐留米軍の撤退では、イスラム主義組織タリバンの復権を許し、現地の人々が危険にさらされた。その判断は内外から疑問視された。

 新型コロナや地球温暖化など、国際社会が一致して取り組まなければ解決しない問題が山積している。バイデン氏は中ロを含めて各国との対話を深め、安定した国際秩序の構築を目指してほしい。

 大統領就任式でバイデン氏は、国家団結に「全霊を注ぐ」と誓った。しかし現状は程遠い。

 看板政策で左派が成立を望む大型歳出法案は、民主党の中道派上院議員1人の反対で暗礁に乗り上げた。党内の分断も深刻である。

 バイデン氏は、民主党支持者が多い黒人や中南米系の投票権を事実上制限する州法に対抗する連邦法案の成立を目指すが、党内をまとめ切れていない。

 議会対策を担う立場のハリス副大統領も存在感が薄い。「ポストバイデン」の期待はしぼんだ。

 トランプ氏は2024年の大統領選に向けて動きを活発化させている。バイデン氏は1年前の連邦議会襲撃に見られたような、傷ついた民主主義の立て直しを実績をもってアピールする必要がある。

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