Ukraine Crisis: Russia’s Claim Does Not Hold Up

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大規模な軍部隊の展開で圧力をかけ、自国の言い分をのませようとする。ロシアがやっていることは、国際法が禁じる武力による威嚇にほかならない。

 プーチン大統領がウクライナ国境周辺で、近年に例を見ない規模の部隊を集結させている。もし本格的な侵攻を始めれば、第2次大戦後の欧州で最大の武力紛争に発展しかねない。

 ロシアは米国主導の北大西洋条約機構(NATO)に対し、ウクライナが加盟しないことを保証するよう要求している。

 だが国連憲章は、他国の領土や政治的独立を脅かす目的での武力による威嚇を禁じている。2度の大戦を教訓にした戦後国際秩序の基本ルールだ。

 ロシアはすでに憲章の精神を踏みにじっている。国連安保理の常任理事国として、独立国の主権平等の原則を守る重責があるのに、8年前にクリミア半島を占領した。プーチン氏は「ウクライナの主権はロシアとのパートナー関係の中でのみ可能となる」と強弁した。

 NATO加盟の欧州諸国や、米国と安保条約を結ぶ日本についても、主権の一部を放棄している、と評したこともある。

 各国には安保政策を自ら決める権利がある。他国の主権を勝手に限定するプーチン氏の対外姿勢は到底容認できない。

 欧州の各首脳が外交努力を活発化させているのは、前向きな動きだ。マクロン仏大統領やジョンソン英首相がプーチン氏と電話し、警告を送った。独仏首脳は結束を確認した。

 米国はウクライナの周辺国に軍部隊を派遣するとともに、ロシアが侵攻すれば欧州などと連携して強力な経済制裁を科す構えだ。一方、欧州の多くの国はロシアのエネルギーに依存している現実もある。

 ひとたび武力紛争に陥れば、ロシアも欧州も、世界の秩序も深刻な打撃を被る。破局を防ぐために各国は足並みをそろえ、プーチン氏に理性を働かせるよう説得せねばならない。

 米国の責任も重い。ロシア側にも非があるとはいえ、ソ連時代に結ばれた中距離核戦力全廃や迎撃ミサイル制限の条約を失効させたことが、ロシアの疑心暗鬼を強めた側面は否めない。

 今回を機に、世界の9割以上の核兵器を保有する米ロは、軍縮と軍備管理の取り組みを再起動させるべきだ。中国も含む近年の軍拡路線を転換し、新たな国際安全保障の枠組みを探る契機とせねばなるまい。

 日本は決して等閑視できる状況ではない。国際原則の揺らぎは、アジアにも波及する。欧米に追随する受け身ではなく、ロシアを思いとどまらせる外交策を自ら考え、動くときだ。

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