米の対日鉄鋼関税 「負の遺産」は全て解消を
2022/2/12 05:00
米政府は日本から輸入する鉄鋼製品に課している追加関税をめぐり、その一部を免除するために一定数量の無関税枠を設けると発表した。
ただし、枠を超える分には引き続き25%の追加関税を課す。また、10%の追加関税をかけているアルミニウム製品については、現行制度を維持することになった。
納得できない内容である。トランプ前政権時に課した鉄・アルミへの追加関税は、いずれも完全撤廃するのが筋だからだ。撤廃を求めてきた日本が無関税枠で折り合いをつけたのも残念である。
トランプ前政権は覇権を追求する中国に厳しく対峙(たいじ)した実績の一方で「負の遺産」も残した。
中国による鉄鋼の過剰生産問題に結束して対処すべき日本や欧州連合(EU)にまで、安全保障上の脅威という理屈で独善的に追加関税を課したのもそうだ。
バイデン政権が同盟国などとの連携を重視するというのなら、まずは前政権から引き継いだ懸案を全て解消すべきである。
鉄鋼の無関税枠は年間125万トンで、追加関税を導入した2018年と翌19年に日本から輸入した数量を踏まえて設定した。17年実績の173万トンには及ばない。
米国は昨年10月、EUとの間でも無関税枠の導入で合意した。米国が関税撤廃に応じないのは、今秋の中間選挙をにらみ、鉄鋼業界の労働者らが反発することを回避したいからだろう。だが、鉄鋼などへの一方的な追加関税は世界貿易機関(WTO)ルールにもそぐわない。米国は自国の事情ばかりを優先すべきではない。
萩生田光一経済産業相は今回の米国の対応を「WTOルールに整合的な形での完全解決に向けた一歩」としており、今後も関税撤廃を求めていくという。その際にはいたずらに先送りされることのないよう、EUとも連携して働きかけを強めなくてはならない。
日米間には他にも関税上の懸案がある。例えば日本車に対する米国の関税撤廃もそうだ。本来はトランプ政権時の日米貿易協定に盛り込むべきだったのに、その議論は先送りされたままである。
バイデン政権は日本などと連携し、インド太平洋地域で「新たな経済枠組み」を構築しようとしている。そのためにも、こうした日米間の懸案を一つずつ着実に解決していくことが重要である。
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