ロシアのプーチン大統領に、ウクライナ侵略の停止に向けて最大の影響力を行使できるのは、中国の習近平国家主席だ。その責任から逃れることは決して許されない。
バイデン米大統領と習氏がテレビ電話で会談した。ロシアのウクライナ侵略後、両首脳が会話を交わすのは初めてだ。
バイデン氏は、中国がロシアを軍事面や経済面で支援した場合、相応の代償を払うことになると警告した。中国がロシアと同様の厳しい経済制裁を受ける可能性も提起したとみられる。
習氏からはロシアを批判する言葉はなかった。米欧の対露制裁については「全面的、無差別的で、一般の人々が苦しむ」として反対する立場を示した。米国に対し、中国への制裁に踏み込まないよう 牽制 したのだろう。
だが、プーチン氏の蛮行に対し、米欧はこれまでにない結束を見せている。習氏は対中制裁の警告を軽くとらえるべきではない。
見過ごせないのは、習氏が「米国と北大西洋条約機構(NATO)がロシアと対話し、安全保障上の懸念を解消すべきだ」と述べたことだ。自らプーチン氏と会談し、事態収拾を図る意思がないことを示したに等しい。
ウクライナ危機は現在、岐路に立っている。ロシアは当初もくろんでいた短期戦による勝利を果たせず、 兵站 上の課題に直面していると指摘されている。
こうした状況下で中国が武器や兵士の食料などを提供すれば、ロシア軍が勢いを盛り返し、ウクライナへの非人道的な攻撃が苛烈さを増すのは明らかだ。
ロシアは制裁による打撃を緩和するため、中国から金融面や貿易で手厚い支援を受けることも想定しているだろう。
仮に中国が支援を見送れば、ロシアの窮状はさらに強まることになる。そこまで来てようやく、停戦や軍の撤収の可能性が現実味を帯びる。中国の責任は重大だ。
習氏は、米国主導の国際秩序の改編を目指して、中露間の「上限のない協力関係」をプーチン氏と約束している。これ以上、事態の当事者ではないかのようにふるまうことや、中立的な立場を装うことは認められない。
中国は、世界の平和に責任を持つ国連安全保障理事会の常任理事国で、拒否権という決定的な権限を有する大国だ。その自覚が見られず、ロシアの侵略に実質的に加担するようでは、国際的な信用を失うだけではないか。
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