US and China Should Work Together To Address the Crisis of Order

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(社説)米中首脳協議 秩序危機へ共に対処を

大国間の覇権争いが人間の命より重い世界であってはならない。米国と中国は分断ではなく、平和と安全を守る旗印の下で行動を共にするべき時だ。

 バイデン大統領と習近平(シーチンピン)国家主席がテレビ電話で協議した。ロシアによるウクライナ侵攻以来、2大国の首脳が初めて直接話しあった。

 近年、米中は新冷戦と呼ばれるほど対立を深めてきた。秩序を揺るがすロシアの暴挙が、その流れにどんな影響を生むか注目されているが、今回の議論は平行線をたどったようだ。

 侵攻に対し中国は反対を明示していない。国連憲章や国家主権の尊重などの一般論は語っても、侵略の不当さには触れず、あいまいな態度を続けている。

 安保上も経済上もロシアと肩を組むほうが、対米競争を進めるうえで有利だとの考えから抜け出せないのだろう。だが、いまの局面を、中国指導部は熟考してもらいたい。

 プーチン大統領が始めた戦争は、国際社会への挑戦だ。強国が独善の歴史観で隣国の主権を侵す行為がまかり通れば、大戦の過ちが繰り返される。各国が自らの損失も覚悟して対ロ制裁に動くのは、そんな世界を恐れるからだ。

 「中国は危機の当事国ではない。制裁による影響を望まない」(王毅〈ワンイー〉外相)という釈明は身勝手というほかない。中国も本来あるべき秩序と規範に照らして、この戦争をどう考えるか旗幟(きし)鮮明にすべきである。

 協議で習氏は「無差別な制裁で苦しむのは庶民だ」と述べたというが、ならばその庶民の命と暮らしが戦場で日々失われている現実を直視すべきだ。プーチン氏を止める非軍事の手段が経済制裁であり、その有効性は中国の動きに左右される。

 中国では秋に共産党大会が予定される。習政権は社会の安定を最優先しているが、その土台である経済発展は、国際社会との相互依存の上に成り立つことを忘れてもらっては困る。

 今回の協議でバイデン氏は、中国が対ロ支援をすれば「結果」が伴うと、警告したという。市民への攻撃など人道危機の様相が深まるなか、両首脳の意思疎通の場を設けたこと自体は結構だ。

 ただし、ここは米国も旧来の覇権争いの思惑にとらわれてはなるまい。欧州の戦争は、国際安全保障が米中の二極化という単純な視点だけでは描けないことをはっきりさせた。

 中国も言葉では認める国連中心の「法の支配」という基本理念をどう実現させていくか。米欧日をはじめ各国とも、内向き思考を脱して対話と説得に基づく外交努力を尽くすべきだ

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