Has American Nuclear Policy Abandoned the NPT?

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〈社説〉米国の核戦略 廃絶の責務 置き去りにか

核拡散防止条約(NPT)は米国やロシアをはじめ核保有国に、核軍縮を誠実に進める義務を課してきた。その責務が置き去りにされ、NPT体制が土台から崩れかねない状況だ。

 米政府が概要を公表した「核体制の見直し(NPR)」は、同盟国への「核の傘」による拡大抑止の維持を最優先事項とし、従来の核政策を踏襲した。核攻撃の阻止や反撃に役割を限定する「唯一の目的」の宣言は見送った。

 バイデン政権下で初のNPRである。大統領に就く前から「唯一の目的」化を公言していたバイデン氏だが、抑止力の低下を懸念する同盟国に配慮したという。

 相手国より先に核兵器を使わない「先制不使用」の宣言も取りざたされたが、立ち消えた。オバマ政権から受け継ぐとした「核なき世界」への展望は見えない。

 松野博一官房長官は今回のNPRを強く支持すると述べている。政府はかねて、日本の安全保障に十全を期せないとして先制不使用の宣言に反対してきた。核の力を弱めまいとする姿勢は、被爆国の責任をなげうつに等しい。

 米国の核戦略の背景にあるのは新型兵器の開発を進め、核戦力を増強するロシアや中国の動きだ。ウクライナに侵攻したロシアは、核の使用をちらつかせて威嚇し、脅威の水準を一気に高めた。

 核大国の無法な振る舞いが、核で対抗する動きを生み、実際に使われる危険を招き寄せている。であればこそ、国際社会は核廃絶に向けた努力を滞らせるわけにいかない。保有国に廃絶への取り組みを一層強く迫る必要がある。

 核兵器は二度と使われてはならない。それを保証する唯一の方法は完全な廃絶だ―。広島、長崎の被爆者たちの訴えが結実した核兵器禁止条約は、核戦争の危機に直面する世界の現実を前に、さらに重みを増している。

 保有や使用だけでなく、核による威嚇を含めた一切を禁止する条約を、保有国は、NPT体制を損ない、核廃絶をかえって遠ざけると批判し、背を向けた。その姿勢が厳しく問われる。

 NPTの履行状況を確かめる再検討会議で、保有国は完全廃棄の「明確な約束」に合意しながら、たなざらしにしてきた。米ロの核軍縮の枠組みは細り、中国を加えた交渉の場もできていない。

 NPTを崩壊の危機にさらしているのは保有国だ。その現実を直視し、廃絶に向けた具体的な行動を取るよう働きかけることこそ日本政府が果たすべき役割だ。

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