US Nuclear Policy: The Path to Disarmament, Not Tensions

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<社説>米国の核政策 緊張高めず軍縮の道を

04/19 05:05

 米国がバイデン政権で初となる「核体制の見直し(NPR)」の概要を公表した。「核の傘」堅持を明記し、核兵器の使用条件を厳しくする政策の採用は見送った。

 NPRは核戦略を巡る米政権の中期的指針だ。バイデン大統領は2020年の大統領選で、核の役割を敵の核攻撃阻止や反撃などに限定すると公約していた。

 しかし、ウクライナに侵攻して核の使用も示唆するロシアや、軍拡を続ける中国、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮などへの懸念が広がる中、同盟国への核攻撃の抑止を理由に公約実行を断念した。

 核の力に頼り、脅威に脅威で対抗するやり方は、相手国にも核戦力増強の口実を与えて、軍拡競争をあおることになろう。

 米国はロシアや中国を巻き込んで、核軍縮を主導する役割こそが求められている。オバマ元大統領が提唱した「核なき世界」の理念を継承するバイデン氏はその先頭に立つべきだ。

 バイデン政権で初となる臨界前核実験が昨年6月と9月に行われたことも明らかになった。トランプ政権下の20年11月以来だ。

 非人道的な核兵器の開発につながる実験を許すことはできない。広島と長崎の被爆者らが怒りと失望を表明したのは当然だ。

 米国は、核拡散防止条約(NPT)が核保有国に核軍縮義務を課すことを忘れてはならない。

 臨界前核実験は核分裂の連鎖反応が続く「臨界」前に核分裂を止め、核爆発させずにデータを取る。核弾頭の小型化など核兵器の近代化のため不可欠とされる。

 こうした「使える核兵器」と称する小型核はロシアも保有している。核使用のハードルを下げる危うさがあり、開発競争が激化する懸念も指摘される。

 実際、プーチン大統領はウクライナ侵攻時、最新兵器保有を強調し、核保有国の立場を誇示した。決して看過できない。

 ウクライナで核の脅威が高まる今だからこそ、これ以上の緊張は避け、停滞する核軍縮を再び始動させなければならない。

 北朝鮮は核実験再開の準備を進める。米国などが北朝鮮に完全な非核化を迫る一方、自らが核開発を続けるのでは説得力を欠くのではないか。

 今年6月には核兵器禁止条約の第1回締約国会議が、8月にはNPT再検討会議が開かれる。

 核保有国は核廃絶と核軍縮を求める国際世論に真摯(しんし)に耳を傾け、実行に移す必要がある。

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