ツイッター買収 「言論の自由」は責任伴う
2022/5/6 9:00
米電気自動車(EV)大手テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が、短文投稿サイトを運営する米ツイッターを買収することになった。
ツイッター上の「言論の自由」を確保するとし、不適切な投稿の削除やアカウント停止といった規則の緩和を目指す考えだという。
マスク氏は「言論の自由の絶対主義者」を自称し、「言論の自由は民主主義が機能するための基盤だ」とも強調してきた。
マスク氏の主張の通り、言論の自由を尊重し、守っていくことは当然だ。だが、それには社会に対する責任が伴う。
ツイッターやフェイスブックなどの交流サイト(SNS)は情報交換の有効な手段として世界中で利用されている。
ツイッターは、世界2位の市場である日本を含む2億人超のユーザーを持つ。
政治家やアーティスト、経営者らもSNSを活用し、その発言は大きな影響を与えている。
一方で、SNSは偽情報や中傷、差別発言などを拡散し、深刻な問題も引き起こしている。
国内では新型コロナウイルスのワクチンに関し「不妊になる」といった偽情報が広がった。プロレスラーの木村花さんが匿名の誹謗(ひぼう)中傷を受け自殺した。
SNSは「凶器」になりかねないが、その懸念に対しマスク氏はこれまで具体的な言及をしていない。経営権を握る立場として丁寧に説明するべきだ。
マスク氏は型破りな起業家として知られ、EV以外にも宇宙産業や医療など幅広い分野をリードし、世界一の富豪となった。
ツイッターとは約5兆7千億円の買収額で合意した。ただ、運営方針は不明確な点が多い。
これまでツイッターは攻撃的、差別的、性的といった独自のガイドラインに違反した投稿には、削除やアカウント凍結など一定の対策を講じてきた。
2021年1月の米議会襲撃では、トランプ前米大統領があおったとしてトランプ氏のアカウントを永久凍結し、注目された。
これに対し、マスク氏のこれまでの発言からは、サイト運営側による規制を検閲ととらえ、アカウントの停止や凍結は極力避けるべきだとの姿勢がうかがえる。
欧米などではSNSの規制強化の動きが進む。
欧州連合(EU)各国は、偽情報など違法なコンテンツの排除を巨大IT企業に義務付ける法案に合意した。日本政府も規制強化を検討している。
国による言論の規制は慎重であるべきだが、一方で明らかに問題のある投稿が野放図に広がってはならない。
マスク氏には、利用者が安心して情報交換できるSNSのビジョンを明確に示してもらいたい。
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