Substantial US Interest Rate Hike Overemphasizes Domestic Concerns

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<社説>米が大幅利上げ 自国偏重でない判断を

米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月に行った事実上のゼロ金利政策の解除に続き、0・5%の利上げを決めた。

 0・5%は通常の2倍で、22年ぶりの上げ幅だ。膨れあがった保有資産の縮小も来月始める。

 景気過熱による40年ぶりの高インフレは米経済の重荷となり、ガソリンなどの物価高騰に対する国民の不満は高まっている。

 連邦議会の中間選挙を11月に控える中、大幅利上げと資産縮小という二重の引き締めでインフレ退治を狙っているのだろう。ただ、対処を急ぎすぎれば景気後退に陥りかねない。

 米国の利上げは、コロナ禍とウクライナ危機で疲弊した国々の景気や為替相場に幅広く影響する。

 とりわけ心配なのは新興国や途上国だ。高金利の米国へと資金が流出し、経済が失速しかねない。

 FRBには世界経済安定とインフレ抑制の両立を求めたい。利上げの頻度や規模が内外の情勢に照らして適切か、点検を重ねる必要がある。自国の都合だけを優先させることがあってはならない。

 新興国が自国からの資金流出を防ぐために利上げすれば、景気の冷え込みにつながる。

 ウクライナ危機で加速するエネルギーや食料の価格上昇に苦しむ国々には追い打ちとなろう。

 新興国の債務はドル建てが多い。米利上げは返済負担を増やし、デフォルト(債務不履行)の危険性を高めることに注意したい。

 米国の過去の金融引き締め局面では、新興国の通貨危機・債務危機が幾度も発生した。先月にはスリランカが部分的なデフォルトに陥っている。

 国際通貨基金(IMF)などは、経済危機や政情不安につながる動きがないか警戒を強め、必要な支援を実施すべきだ。

 米英など主要国の中央銀行の多くが金融引き締めに動く中、日銀は金利を極めて低く抑え込む異次元金融緩和を続けている。

 日米金利差は今後さらに広がり、円安ドル高が一段と進む可能性がある。円安は輸入品の価格上昇を通じて物価高を助長する。

 日銀は円安の負の側面を直視し、早急に金融政策を修正すべきだ。物価高は弱い立場の人ほど影響が大きい。政府は的確な財政政策で暮らしを支えねばならない。

 「ゼロコロナ」を掲げる中国で経済が急減速している。感染拡大を受けた都市封鎖が世界の供給網混乱に拍車をかけかねない。注視していく必要があろう。

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