<社説>米国の銃犯罪 なぜ規制に踏み出さぬ
悲劇のたびに銃規制が叫ばれながら、いつの間にか立ち消えになる。そんな繰り返しは終わりにしなければならない。米南部テキサス州の小学校で起きた銃乱射事件。今度こそ米社会は再発防止へ踏み出すべきだ。
事件では十九人の児童に加え、児童を守ろうとした女性教師二人も犠牲になった。報道によると、その一人イルマ・ガルシアさん(48)は虫の息で児童を抱き締めているところを警官に発見された。
伴侶の死がショックだったのだろう。事件の二日後、ガルシアさんの夫も心臓発作で亡くなり、四人の子どもが残された。
犯人の十八歳の少年が所持していたのは殺傷能力の高い半自動小銃「AR15」である。二〇一七年にネバダ州ラスベガスで五十八人が死亡した史上最悪の銃乱射事件でも使われた。
バイデン大統領は「こんな銃を十八歳の少年が店頭で買えるなんて、間違っている」と述べたが、こうした殺傷能力の高い武器は全面的に禁止すべきである。
米国では総人口よりも多い四億丁の銃器が流通しているという。銃規制を目指す民間団体によると、年間で自殺を含めて四万人余が銃で命を落とす。
しかもコロナ禍が本格化した二〇二〇年、銃の販売数は二千万丁を超えて過去最多を記録した。コロナ禍による治安悪化への懸念が指摘されている。
米憲法修正第二条は「規律ある民兵は自由な国家の安全に必要であり、国民が武器を保有し携行する権利は、これを侵してはならない」として、自衛のための銃の所持を認めている。
銃規制反対派はこの憲法条項を盾にするが、警察機構が整備されていなかった建国当初とは時代が違う。
ロビー団体である全米ライフル協会の反対も壁になっている。政界に及ぼす影響力は強く、銃購入者の身元調査の厳格化といった規制の立法化は進まない。
バイデン氏は「こんな事件は世界のよその土地ではめったに起きない」と嘆いた。米社会はその異常ぶりを自覚する必要がある。
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