Biden Must Restore America’s Presence in the Middle East

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バイデン氏の中東政策 再構築に向け関与継続を

バイデン米大統領が中東のイスラエルとパレスチナ自治区、サウジアラビアを歴訪した。

 サウジではペルシャ湾岸6カ国の湾岸協力会議(GCC)首脳会合に出席し、ロシアのウクライナ侵攻で高騰する原油価格の抑制に向けて増産を要請した。

 米国は従来、中東外交を重視してきたが、就任から約1年半を経過しての初訪問である。人権問題をめぐってサウジとの関係が悪化したことなどが影響している。

中東の友好国との関係を修復するのが訪問の目的だった。だが、増産の確約は得られず、思い通りの成果を上げたとは言い難い。

 責任の一端は、一貫性を欠く米国の中東政策にある。

 トランプ前大統領はパレスチナの反発をよそに聖都エルサレムをイスラエルの首都と宣言する一方、サウジには武器を大量に売却して蜜月関係を築いた。

その後、バイデン氏は在米のサウジ人ジャーナリスト殺害にムハンマド皇太子が関与したと公表し、サウジを「のけ者にする」と批判して遠ざけた。

 揺れ動く政策の代償は大きい。サウジは原油産出の調整でロシアと協調し、中国と軍事協力を強めている。中露への接近で米国の影響力は低下している。

とくに懸念されるのがイランの動向である。トランプ政権時代に米国が核合意を離脱すると、核開発を再開し、すぐにでも核兵器を手にできる状態にあるという。

 イランが核を持てばサウジも追随する恐れがあり、核拡散のリスクが高まる。米国とサウジの関係改善が急がれる理由だ。

バイデン氏は歴訪中、イスラエル、インド、米国、アラブ首長国連邦(UAE)の首脳会議をオンラインで開催した。頭文字をとって「I2U2」と呼ばれる。

 いずれもイランの核保有を警戒しており、連携を強めてイランの行動を抑止する狙いがあるのだろう。インドには中国の中東進出をけん制する思惑が透けて見える。

 対中露で「二正面作戦」を強いられる米国が中東に割く余力は限られる。だが、関与を弱めれば地域は不安定化するばかりだ。

 地域諸国との協力を基盤とした中東政策を再構築することが、失地を回復する道だ。

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