<社説>米軍撤退1年 タリバンは人権尊重を
米軍がアフガニスタンから完全撤退して1年たった。
復権したイスラム主義組織タリバンの暫定政権は極端なイスラム教解釈による統治を行い、人権を侵害している。経済は破綻し、多くの国民が飢餓の淵にある。
タリバンは多民族国家を反映した包括的な政権をつくることを約束したはずだが、実行しておらず、暫定政権を承認した国はない。
この状態を続けても、各国の協力は得られず、国を立て直すことはできないことを、タリバンは深く認識すべきだ。
とりわけ懸念されるのが女性の人権状況だ。
タリバンはイスラムの教えに反した行為を取り締まる「勧善懲悪省」を復活させ、近親男性を伴わない女性の遠出を禁じたり、公共の場で全身を覆う衣服ブルカ着用を義務付けたりした。
女性は公職から排除された。女子の中等教育は全面再開しておらず、少女らは「秘密学校」に通うか、一日の大半を自宅で過ごすことを余儀なくされている。
女性を著しく差別し、教育の機会を奪う統治は国際的な理解を得られないだろう。
タリバンは当初、全国民の「恩赦」を約束したが、実際には前政権関係者を迫害している。国連によると、少なくとも160人が超法規的に「処刑」されたという。少数民族への弾圧も見られる。
これでは国民の融和は進むまい。部族の代表らが参加するロヤ・ジルガ(国民大会議)を機能させて、民主的な話し合いの枠組みを作る必要がある。
貧困や飢餓は依然深刻だ。国連アフガン支援団(UNAMA)によると、2300万人が深刻な食糧不足に直面している。
6月に発生した東部の地震では死者が千人を超えた。
いずれも国連などが援助しているが、一層の支援が必要だ。武力で政権を奪ったタリバンの統治に正統性は認めがたいが、人道的立場から対話を進める必要はある。
半ば投げ出すように撤退し、混乱を招いた米国にもアフガンに関与を続ける責任があろう。
米国は先月、首都カブールで国際テロ組織アルカイダの最高指導者をドローン攻撃で殺害した。タリバンと敵対する過激派組織「イスラム国」(IS)系によるテロも散発している。
アフガンが再び「テロの温床」となれば、世界の安全が脅かされる。米国はじめ各国はアフガンの安定に力を尽くさねばならない。
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