Need for Unity in Pursuing Cease-fire in Ukraine

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ウクライナ侵攻半年 停戦追求へ結束強めたい

2022/8/24 6:00

 出口の見えない戦争が続いている。しかも状況は一層深刻になるばかりだ。

 戦地の拡大とともに多くの市民が犠牲になり、故郷を追われた。核の脅威も増している。

 食料やエネルギーの供給が滞り、世界経済に与えている影響も甚大だ。侵攻を巡って国際社会は分断を深めている。

 戦争は不信や憎悪を増幅させる。一刻も早く惨劇に終止符を打つために、国際社会は結束を強め、ウクライナを支え続ける必要がある。

 ロシアのウクライナ侵攻が始まって24日で半年となった。

 「第2次大戦後の欧州最大の戦争」と言われるほど被害は大きく、長期化している。

 主権国家を軍靴で踏みつけるロシアの暴挙は、到底容認できない。侵攻を主導するプーチン大統領の覇権主義を改めて強く非難する。

 ◆核の脅し許されない

 ロシアは現在、ウクライナ東部で制圧地を拡大し、南部で実効支配の強化を図っている。

 東部ドネツク州などでは自国編入の是非を問う「住民投票」を行う準備も進めている。投票が強行されれば「編入承認」が発表されるとの見方が根強い。

 一方、ウクライナは米欧の軍事支援を受けて徹底抗戦し、一部地域を奪還した。

 攻防は2014年にロシアが強制編入した南部クリミア半島に及んでいる。

 こうした中で、懸念されているのは原発周辺が戦闘地域になっていることだ。

 ロシアは南部にある欧州最大のザポロジエ原発を軍事拠点化した。周辺で砲撃が続き、ロシア、ウクライナ双方は相手の攻撃だと主張している。

 原子炉や使用済み核燃料を冷却する電源システムが破壊される恐れもあり、その場合、核燃料が溶け落ちる炉心溶融が起きた東京電力福島第1原発のような事故を招きかねない。

 国連は原発の安全性を確認するため、国際原子力機関(IAEA)の調査団の派遣を支援する方針だ。ロシアを説得し、軍部隊を撤退させることで危険要素を取り除いてもらいたい。

 プーチン氏は当初、短期間で侵攻が成功すると予想していたとみられるが、首都キーウ(キエフ)制圧に失敗するなど作戦の変更を余儀なくされた。

 戦況を打開する狙いからか、プーチン氏は核兵器使用の威嚇を公然と繰り返している。

 核施設を盾にしたり、核兵器で脅したりする行為は卑劣であり、許し難い。

 ◆欠かせぬ支援の継続

 24日はウクライナがソ連から独立宣言して31年となる。

 これを前にゼレンスキー大統領は「われわれは勝利する」と語り、国民の結束を呼び掛けた。徹底抗戦を続ける考えだ。

 これに対し、プーチン氏も「全ての作戦目標を達成する」として強硬姿勢を崩さない。

 米国こそが長期化の責任を負う張本人だとも主張した。

 米国など西側諸国がウクライナに武器を供与していることを非難したのだろう。プーチン氏の主張は身勝手さが際立つ。

 深刻なのは、和平の道筋が見えないことだ。

 米国のバイデン政権はウクライナ支援を継続するものの停戦の青写真を描けていない。

 米主導の国際秩序からの転換を狙う中国は、ロシアとの共闘戦略をとる。エジプトやインドなども米欧とは距離を置く。

 エネルギー危機や物価高騰に直面する欧州各国では、ウクライナへの「支援疲れ」の懸念も出ている。

 厳しい状況とはいえ、国際社会は停戦を粘り強く働きかけていくことが求められている。

 破壊と殺りくを続けることは許されないからだ。

 日本も強い覚悟を示したい。岸田文雄首相は先進7カ国(G7)との連携による対ロ制裁やウクライナ支援の継続を関係閣僚に指示した。

 平和を希求する国として、戦争や力による一方的な現状変更を決して許さない姿勢を掲げなくてはならない。

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