Japan Needs To Prepare for a US Emergency

 

 

<--

日本は「米国の有事」に備えよう 麗澤大学准教授 ジェイソン・モーガン

2022/9/8 08:00

8月6、7日、安全保障問題のシンクタンク「日本戦略研究フォーラム」主催の政策シミュレーション「徹底検証:台湾海峡危機 日本はいかに備えるべきか」が行われた。いわゆる「台湾有事」に関する机上演習で、同フォーラムの上席研究員として、また英語で情報発信するオピニオンサイト「ジャパンフォワード」の取材でオブザーバー参加した。

「有事」の危機感高まったが

土日2日間、二つの重要なポイントが浮き彫りになったと感じた。一つ目は、現職国会議員や元官僚らも参加した机上演習では、これまでとレベルの違う「日本政府」の危機感があった。

サイバー攻撃などを含め、「危機」を想定したシナリオが岩田清文元陸上幕僚長が担当した「統裁部」から参加者に投げ掛けられた。首相役を務めた小野寺五典氏、外相役の松川るい氏、防衛相役の大塚拓氏らが緊迫感を持って臨んだ。今年7月に凶弾に倒れた安倍晋三元首相が指摘していた「台湾有事は、日本有事だ」とのもっともな観察は、ようやく日本社会に広く理解されてきたのは間違いない。

リアルな緊迫感があったのは、ペロシ米下院議長の訪台を受け、中国が軍事演習を行い、弾道ミサイルを日本の排他的経済水域(EEZ)に撃ち込むなど暴挙に出た影響もあったからだ。

しかし、もう一つ浮き彫りになった気がかりなことがある。「米国」の存在が非常に一元的で、リアル感に欠けていることだ。

机上演習では、中国の侵略などによる危機が展開する中、日本の「首相」「防衛相」らが「ワシントン」(隣室)まで駆け付けて、米大統領役の元米国務省日本部長のケビン・メア氏、米国務長官役の長島昭久氏と会談を行った。期待通り、米政府、米軍が動いてくれた。つまり米側は正常に稼働して必要に応じて出兵するほか、核の傘を日本の自衛隊に差しかけてくれていた。

米国が助ける「幻想」

これは米国人の私の目から有り得ない。机上演習がその瞬間でフィクション(虚構)というより、ファンタジー(幻想)にみえる。

ワシントン・ポストの報道によると8月4日に、米国の歴史学者数名がホワイトハウスでバイデン大統領と会合をもった。歴史学者は、米国の国内分断は1860年頃と似るようになって、南北戦争寸前の時に近い状態になっていると指摘したという。

この歴史学者は米国の大学などに勤める左翼だ。しかし、彼らの主張に賛成する一般的な米国民もいる。米国は、内部で2つになった。「内戦」という驚くべき言葉が頻繁にニュースやオピニオンコラムに出ている。

歴史学者がホワイトハウスを訪問した数日後、連邦捜査局(FBI)がトランプ前大統領のフロリダ州にある豪邸に現れ、家宅捜索を行い十数箱の資料などを持ち帰ったとの報道も驚くべきことだ。連邦政府が前大統領をターゲットにしたという前例のない、極めてアグレッシブ(攻撃的)な行動だった。メラニア夫人のクローゼットまで入り、洋服を引っかき回したとも報じられている。

トランプ氏が「機密」資料を持っていたと、ガーランド司法長官とレイFBI長官は言うが、共和党の支持者、とりわけトランプ氏の支持者は、連邦政府の言うことを信じない。ヒラリー・クリントン元国務長官も「機密」資料を自分の家で保管していたが、FBIの強制捜査はなかった。

日本にとっても危険な状況

ビル・クリントン政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官、サンディー・バーガー氏は、クリントン元大統領のテロ対策を批判する資料をズボンの中に隠し米国立公文書記録管理局から盗みハサミでコンフェティ(紙片)にした。クリントン氏をかばうためなのは一目瞭然だったが、クリントン氏はFBIの強制捜査を免れた。FBIの公平性を疑う例はほかにもある。

米民主党が連邦政府を「武器化」して、共和党を攻撃している印象が高まっている。米国人同士の信頼感が失われている。日本にとってもとても危険な状況だ。

FBIだけの問題ではない。米国ではインフレが止まらず、物価が急騰している。不法移民やそれに伴う麻薬、人身売買などが後を絶たない。大都市の殺人事件、強盗などの犯罪が絶えず、日々記録を刻んでいる。

対中関係では、中国海軍の船の数が米海軍を上回ったことも報じられた。米国の国内のムードは「戦う前にも、もう負けている」というネガティブな考え方が広まっている。

前述した台湾有事のシミュレーションの中では、「米大統領」は、レーガン時代が再来したかのように行動していた。でももう、その時代は終わった。安倍元首相のおかげで日本人はやっと、台湾有事の危険に目が覚めたけれども、米国内の状況を十分認識し、「米国有事」にも備えてもらいたい。米国がいつも日本を助けてくれるとはかぎらない。

About this publication