[普天間第二小PFAS] 脅かされる学校の安全
米軍普天間飛行場に隣接する宜野湾市の普天間第二小学校の土壌から、米国が定めた基準値を超える有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)が検出された。
市民団体「宜野湾ちゅら水会」が、県環境科学センターに調査を依頼していた。同会は飛行場からの排水が、校内に流入している可能性があるとみていた。
米環境保護局(EPA)は、詳細な調査が必要とされる基準値を1キログラム当たりPFOS(ピーホス)38ナノグラム、PFOA(ピーホア)920ナノグラムと定めている。今回検出されたPFOSは、裏門付近で米基準の29倍、グラウンド南側のバックネット裏で18倍だった。
PFASが最も高濃度で検出された裏門付近には、児童が授業の一環で野菜などを育てる畑があるという。
グラウンドを駆けっこしたり、畑で作業する児童らに、影響はないのか。最も安全安心が求められる学びの場での環境汚染は、親や関係者に衝撃を与えている。
同会は、これまで県や宜野湾市に調査を求めてきたが、行政は、国内での基準値や分析方法が確立していないとして消極的だ。
環境衛生学が専門の原田浩二京都大准教授は「土ぼこりなどを介し、子どもたちが汚染された土壌を口にしている可能性がある」と指摘する。
不安を抱える保護者も多い。基地を提供する国は児童への健康調査や詳細な土壌調査を実施 するべきだ。
PFOSは自然界ではほとんど分解されない。体内に蓄積し、半減するまで約4~7年かかる。発がん性などの健康リスクが報告されている。
EPAは今年6月、PFASの飲料水中の生涯健康勧告値を、従来の3千倍に大幅に厳格化した。「ゼロに近い量でも健康に悪影響を及ぼす恐れがある」としている。日本政府はEPAの従来勧告値を参考に、暫定指針値(1リットル当たり50ナノグラム)を定めている。
宜野湾、沖縄、那覇など7市町村の飲料水源となる嘉手納基地周辺の河川などから検出されるPFASは、米国の新勧告値を大幅に超える。
米軍は、航空機火災に対処する目的で耐熱性に優れたPFOSを泡消火剤に利用してきた。普天間飛行場の周辺だけの問題にはとどまらない。
県と基地がある5自治体は先月、在日米軍や国に基地内への立ち入りを要請したが、具体的な回答はないという。
日米地位協定や政府が「実質的な改定」と誇った環境補足協定でも、立ち入り調査実現の可否は米側の裁量に委ねられている。水や土壌採取も米次第だ。環境補足協定で立ち入りが認められたのは2015年の発効以降2件だけ。サンプル採取が事故発生から18日かかったケースもある。
子どもの安全や県民の水がめを守るためにも、基地内の土壌や地下水を含めた汚染源の調査は欠かせない。
基地から派生する環境汚染にどう具体的に対応するのか。11日投開票の知事選や宜野湾市長選などでも、問われるべき重要な争点だ。候補者はその道筋を語ってほしい。
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