インド太平洋地域の経済ルール作りは、自由や民主主義などの価値観を重んじる日米が 牽引けんいん しなければならない。中国に対抗する枠組みとして、発展させていきたい。
米国が主導する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合が開かれ、日米韓、豪州など全14か国が正式な交渉入りに合意した。東南アジア諸国連合(ASEAN)は10か国中、7か国が含まれている。
「貿易」や重要物資の「サプライチェーン(供給網)」、脱炭素のための「クリーン経済」、反汚職に関する「公正な経済」の4分野で声明をまとめた。
分野ごとに参加するかどうか決める仕組みで、日米など13か国は全4分野で交渉に入る。インドは貿易のみ不参加としたが、国内総生産(GDP)の合計で世界の約4割を占める14か国が、ルール作りで協調する意義は大きい。
各国の経済成長につながる公正なルールを構築してほしい。
供給網は、感染症の流行や紛争などが起きた際、各国が情報を共有し、重要物資の在庫を融通する体制の整備を目指すという。
クリーン経済では、脱炭素に向けたインフラ投資や技術協力を促進し、貿易では安全なデータの流通などに取り組むとしている。
一方、関税の撤廃や引き下げは盛り込んでいない。米国市場の開放を望むASEAN諸国が利点を感じにくいとの見方があるだけに、各国が恩恵を得られる具体策を練り上げる必要がある。
インドは、自由貿易に関する枠組みである環太平洋経済連携協定(TPP)と地域包括的経済連携(RCEP)協定に加盟していない。今回、IPEFの交渉に加わったことを歓迎したい。
参加国は経済安全保障の強化などIPEFのメリットを示し、インドとの連携を深めるべきだ。
IPEFの狙いは、中国を牽制することにある。中国はRCEPのメンバーで、TPPにも加盟を申請するなど、この地域で通商分野の主導権を確保しようとする姿勢を示している。
しかし、中国は不公正な国有企業への産業補助金や知的財産権の侵害などが問題視されている。その中国が、ルール作りの主導権を握ることは望ましくない。
米国はTPPから離脱し、アジアの経済への関与が薄れることが懸念されていた。IPEFの交渉では、日本が米国とアジアの橋渡し役を務め、経済面での関係を強固にしていくことが重要だ。
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