Need To Pass on the Memory of the Tragedy

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2022/09/18

米同時テロ21年/悲劇の記憶語り継がねば

 米中枢同時テロから今月で21年となった。ハイジャックされた旅客機2機が米ニューヨークの世界貿易センタービル2棟に衝突し、日本人24人を含む約3千人の命が奪われた。ビルの跡地などでは今年も追悼式典が開かれ、テロの発生やビル崩壊の時刻に合わせて黙とうし、犠牲者の名前が読み上げられた。

 新型コロナウイルスの影響で3年ぶりに式典に参加した遺族もいれば、参列を断念し自宅で静かに故人をしのぶ人もいた。今も喪失の重みに耐える人たちの悲しみに寄り添いたい。

 同時テロ後、米国は国際テロ組織アルカイダが主導したとして、拠点があったアフガニスタンに軍事介入した。親米政権を樹立したにもかかわらず、約20年間駐留した米軍が昨年8月に撤退すると、イスラム主義組織タリバンが政権を掌握した。

 タリバンは女性の教育や社会参加を制限し、少数派を弾圧するなど強権的な政治を進めている。米国などの経済制裁の影響で食料や医療物資も足りず、国民の多くが栄養失調や飢餓にあえいでいるという。民主国家づくりを果たせないまま投げ出した米国の責任は重い。

 米国は今年7月、無人機による空爆で、アルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者を殺害した。バイデン米大統領は「アフガンを二度とテロリストの隠れ家にさせない」と成果を強調したが、過激思想は消えておらず「テロとの戦い」には決着がつけられていない。

 アフガンをテロの温床にし続けないために、米国はタリバンと真剣に向き合い、対話を重ねるべきだ。貧困や飢餓の解決に向け、国際社会もタリバンに圧力をかけるとともに、人道支援に力を入れなければならない。

 今年8月、同時テロの遺族らが運営し、事件に関連する展示や語り部ツアーを行ってきたニューヨークの「9・11トリビュート博物館」が閉館した。コロナ禍で訪問者が減り、運営が困難になったという。近くには国営の「9・11記念博物館」もあるが、風化が懸念される。

 憎しみと暴力の連鎖を断ち切り、二度と同じ悲劇を繰り返さないためには、歴史の共有が欠かせない。事件の記憶を語り継ぐ努力を重ねる必要がある。

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